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Sitorinn



「センラー、今日も魔法の練習付き合ってよ」



「ごめんうらたん。ちょっと今日は薬草の様子見に行かないとだから」



「ああ、課題なんだっけ?じゃあしょうがないな。頑張れ」



「おん。ありがと」



うらたんと別れて、俺は早足で薬草園に向かう。

ほんの少しの罪悪感と共に。

課題で薬草を育てなければいけないのは嘘ではない。

けれど、薬草の世話は授業で終わってしまう。

放課後にわざわざ様子を見に行く必要なんてないのに。


ではなぜ放課後まで薬草園に行くのか。

それは、彼女に会うため。


彼女は魔女という有名人。

勿論悪い意味で。

どんな彼女の噂を友人に聞いても悪い噂ばかり。

彼女の名前も、クラスもわからなかった。

だから僕は、この手段を選んだ。

できる限りの間、薬草園に入り浸る。

ほんの少しの可能性に賭けて。



「でも、今日ほんま暑いわ…」



暑くてどうにかなってしまいそうだ。

でも、薬草園には冷房がはいっているはず。

そんな気持ちで薬草園の扉を開けると、



「あ」



魔女、いや彼女がいた。

もう魔女とわからないような格好の彼女はとても輝いて見えた。


学園の魔女は、顔が隠れて表情が見えないほどの長い不気味な髪。

その髪から不意に覗く、恐ろしく鋭い狐目。

真っ黒なローブに身を包み、放課後実験室で怪しげな実験を繰り返す。

この条件に当てはまる生徒が魔女と呼ばれていた。

それにこんな容姿の生徒は彼女くらいしかいないから、皆名前を知らなくても魔女だとわかるのだろう。


でも、目の前の彼女はどうか。

長い髪は高い位地で一つに結わえられ、白いシャツにスッキリとしたジーパン。

片耳に光るイヤリングが、彼女の顔を華やかにさせている。

そして、丁寧に薬草の手入れをしている。


この姿の彼女は、本人を見たことがない生徒なら魔女だって気づかないのではないだろうか。


いや、待て。

こんなこと考えてる場合やないやろ!?

話しかけなあかん!!


彼女とまた会えて高ぶる気持ちを押さえ、近づく。

緊張する…。



「あの、こんにちは」



その挨拶で初めて僕の存在に気づいたような彼女は、しゃがんだまま見上げる。

上目遣いである。

くそかわいい。



「こんにちは。…あ、この前の掃除当番の」



「!?覚えてたんですか?」



「はい。一人で頑張っておられたので」



ちょっと、いやだいぶ嬉しい。

あんな些細なことを覚えていたなんて…。



☆→←☆



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神楽鈴(プロフ) - 〜QSY〜さん» ありがとうございます!更新待たせてしまってすみません!面白いと言っていただけるなんてとてもうれしいです! (2020年9月2日 22時) (レス) id: 2f04c6572f (このIDを非表示/違反報告)
〜QSY〜 - とても面白いです!更新頑張って下さい! (2020年8月23日 20時) (レス) id: ea2c7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
サイダー - あ...() (2020年8月19日 12時) (レス) id: 94909bedb8 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず@夢見月(プロフ) - 志麻君…頑張りなね (2020年7月25日 20時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず@夢見月 - 神楽鈴さん» 更新という行為が嬉しいんですよ!毎日投稿でも多分荒ぶってます←コメ返嬉しすぎるので祭りしてきますね。 (2020年6月25日 21時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神楽鈴 | 作成日時:2020年4月25日 23時

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