ふたりの愛情論(仮)【赤井秀一】 (ページ4)

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左腕と呼ばれる女。ページ4

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何やかんやいって公安に来たのは、まだ2年ほど前の話ではあるが、その短さで隠し球左腕と呼ばれるほどの実力は指折り付きである。

どちらかと言うと同僚の彼とは真反対の性格で、世渡り上手。誰にでも社交的に接し、関係を築き、懐に入り込むのが上手い。簡単に潜入捜査もやってのけた。

しかし、そのパーソナルスペースは広く深く、その話術とオーラでそこに入るものは躊躇なく叩き潰す。

それを見破った降谷はやはり化け物で、それを育て鬼才な彼女を引き抜くと言う強行をやってのけた、管理官の服部という男はよもや神である。そのためか、彼女は降谷と服部によくなついた。あれほど毛嫌いしていた飲み会と言うものが、つまらなくないのだ。

しかし時を同じくして、彼女は騙されたと思った。管理官よりさらに上、上層部の頭はダイヤモンドより硬く、恰幅のおよろしいことと言ったら。元いた場所よりも、女性差別のきらいがあった。

ため息なら、地球を埋め尽くせるのではないのかというほど出た。酒ならサハラ砂漠を湖に変えられるほどは飲んだ。出来るものはすべて同僚に押し付けた。

それでも彼女が公安(ここ)を辞めないのは、やはりそれなりに充実しているから。

同僚のように表だって行動することはない。あくまで隠密に潜入し、巧みに情報収集し、上司の手柄に繋げる。履き潰した靴と折れたヒールの数は数えきれない。国のためじゃない。上司のためなら、髪も指の一本さえ惜しくないと言う口だ。

仕事には感心するほど真面目だが、決して熱くはならない冷静さ、上司の無茶ぶりをはね除け、それ以上のパフォーマンスを魅せる、自由に動かせば動かすほど面白い。
決して右腕にはなれない。忠実だが、危険すぎる降谷にとって、ふたりといない唯一の左腕。

さて、当然のことながら彼女が物語の主人公である。この紹介文からは想像できないかもしれないが、これは恋愛ロマン(ラブストーリー)である。

そう言う少し味のある女、それが新堂Aもとい潜入中の名は駒沢雛通称ヒナである。

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