左腕と呼ばれる女 ページ3
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その女、警察庁警備局警備企画課・降谷零の左腕である。
一言で言うならば、猫みたいな女。
大抵の人間は、彼女の数えきれないほど多面あるうちの、一面も知らない。それでいて、腹の内を全てさらけ出しているように見せるのが得意だから、勘違いするのだ。しかし上司である降谷と同僚の彼は違った。
元々彼女は、警視庁公安部と言っても所属が違い、サイバー攻撃対策センターに居た。飛び抜けて優秀だった。周りが嫉妬する隙も与えず、上司の圧もするりとかわし、そこそこ平穏にやっていたのだ。
しかし、この女も変わり者であった。
大嫌いだったのである。品の無い上司のくだらない話に付き合い、“あれこれセクハラ？”と自分からセクハラかと口にして笑い飛ばすことによって罪から逃げようとする、あの民度の低い飲み会が。
簡単に言うと、降谷が引き抜いた。きっかけは、たまたま降谷がその民度の低い飲み会を目撃し、あんなにも上司に煽られて酒を飲んでいたと言うのにしっかりとした足取りで夜道を歩き、おまけには人がいないことを確認し(もちろん降谷は彼女を尾行していた)、先程の飲み会の愚痴を公園のど真ん中で叫び始めたのだ。
これを目撃した降谷は張れることも気に止めず、腹を抱えて笑った。こんなに滑稽なことがあるかと、声に出して笑ったのだ。躊躇いはなかった。そのままの口で、降谷は自分の元で働くよう誘った。
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そしてこの女、先ほどにも言ったように変わり者である。酒に酔っていたとは言わない。寧ろあのくらいの量素面に近いと言わせていただきたい。二つ返事で首を縦に振り、器量を見定めようと言わんばかりに、面倒くさい手続きとやらをすべて、これから上司になる降谷に任せたのだ。
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歳は28、アラサー目の前だが恋人はいない。なんならこの年まで一人に絞らず、遊んできた身だ。そういう相手なら、足の指をいれても数えたりない。
彼女の容姿を3つの単語で述べるとしたら、榛色の瞳、後ろの景色まで見えてしまいそうな透明肌、艶やかなロングヘアーである。
外見は整いすぎている。上司と並べば輝きで目が開けられないほどである。
ここまで聞くと上品に見えるが、ヒールのあるパンプスで廊下を走り回ったり、階段を2段飛ばしでかけ上がるほどのじゃじゃ馬っぷりはある。(飽くまでそれは、身近な存在しか知らないが)
同僚の彼がそれを見てドン引いてるのは、言わずもがな。
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月16日 19時
