火傷見せ ページ16
『ちょっとごめん、誰か･･･服上に引っ張ってくれる？』
｢主、俺が手伝います｣
『長谷部執事･･･頼みます･･･』
長谷部くんはくいっっと上を服に引っ張る。
右手を動かすための機械に服を挟み込んでいる為
上手く脱げないのだ。
｢あの、主･･･これは･･･｣
『それは後で話そう･･･かな、うん･･･ぐるじい』
｢はっ･･･申し訳ございません！！｣
服を上に引っ張りすぎて上手く呼吸が出来なくなる審神者。
残るはタートルネック状の黒い服。
左の方から手までだけを出した異質な形をした服である。
『うん、少しだけ引っ張ってもらえれば･･･うん』
ぽんと顔を出せば黒い手袋だけをした身体になる。
ふぅと服を左手だけで畳むと突き刺さるような目線を感じ取った。
まぁ、そうなるわな。
｢主･･･どうしたのそれ｣
『んー、どこの事？』
清光が震えた声で俺に問いかける。
｢ぜ、せぜ、全部･･･｣
『ただの火傷だよ』
｢じ、上半身だけなのかい？｣
『いやいや右半身全部だよ。左半身が焼かれなかったのがすごいと思う』
｢ひぃっ！｣
『あははは』
｢どうして笑えるのさ！｣
みっちゃんが涙を流しながら俺を見た。
というか、みんながみんな、泣いていた。
長谷部くんなんか周りに水たまりが出来ていた。
『どうして？･･･さぁ』
俺は右手を･･･動きの鈍い右手を握る。
同感とか･･･哀れとか･･･そういうのが欲しいんじゃない。欲しくない。
｢その･･･君の隠してる右手はなんなんだい？｣
鶴さんは指をさして問うた。
一斉に目線が右手に来る。
あまり動くことの無い右手。
装置を使わないと上手く動けない右手。
手袋を外すと俺でも見たくない光景が待っている。
『･････････』
｢･･････見せたくないのならいいけどな｣
苦しいのは君だろうし。
そうつけ加えられた言葉。
今まで苦しくても表向きは笑って耐え続けた。
苦しくても我慢をした。
痛くても泣かなかった。
全てはイライラしていた母上のために。
『時には向き合わないといけないよね･･･みんなも今そうだし。俺だけ逃げるのもいけないし』
俺は右手に付けられた手袋をとる。
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作者名：のろすけ | 作成日時：2019年7月26日 22時
