33話 ページ33
五条サイド
彼女の告白から年は明けて、桜が舞う季節。
多くの新入生が心を躍らせ新しい学校生活へと踏み入る時期でもあるが、
この高専においては他とは違い今年、新たな入学者はおらず期待していた新しいおもちゃは来なかった。
そして、またつまらない日々が刻々と過ぎていく。
前までだったらAのところへ行ってからかって遊んでいたのに。
さすがにフッた相手に前のように振舞うなんてことは出来ない。
あー、だから嫌だったんだ。こうやって構えなくなるのも、遊び相手がいなくなるのも、
今アイツが何してるんだろうとか少し気になるのも…
男女の関係というのがもどかしく思えた。
「どこに行くか教えてくれたっていいでしょ」
耳に入ってきた硝子の馬鹿でかい声に意識はハッと現実に戻される。
「硝子はそんなに私の行き先が気になるのかい?」
「気付いてないの?アンタすっごい浮かれてるし」
「…」
ピシリと固まる傑。そして「気のせいだ」と告げてはそのまま黙って教室を出て行った。
「二人でなんの話してたんだよ」
気になって硝子に聞くとニヤリと楽しそうに笑みを浮かべ
「最近アイツさ、放課後になったらさっさと帰るでしょ?前までそんなことなかったのに。もしかしたら誰かに会いに行ってるんじゃないかって思って」
「へぇー。面白そうじゃん」
「これは突き止めるしかないでしょ」
「だな」
硝子と共に席を立ち上がっては傑の後を追うように教室を出る。
傑のお熱な相手なんて気になるに決まってる。これはしばらく良い暇つぶしになりそうだ。
「ハハッ…相手どんな奴だろ」
そう遊び半分でワクワクしていた数十分前の自分。
だが、傑を追って辿り着いた先にサァーと血の気が引いて上がっていた熱が冷めていく。
傑の追いついた先は教室だった。外部の人間ではない。しかもこの教室は…
「なに突っ立てんの。ほらここから見える」
その硝子の一声に窓が少し開いた隙間から覗き込めば
傑が夢中になってる相手というのがAだった。
二人の会話内容は分からないが、すげぇ楽しそうなのは分かる。
そして、傑の視線が明らかAに対して好意を向けていることも遠目から分かった。
傑っていつからそんな…いや、よく思い返せばそういう場面は多々あった。
俺が彼女によく構っていた頃、からかいに行こうとするたびに傑は必ずついて来た。
からかいすぎると彼女を庇って気遣うことがよくあった。
「んだよ…ッ」
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時