34話 ページ34
「んだよ…ッ」
好きなら最初からそういえばよかったじゃねぇーか。
それなら傑とAが元々付き合えば俺がAと気まずくなることなんてなかった…はずだ。
「あの二人えらく仲がいいんだな。入る隙がないくらい」
硝子のその言葉に体が強張る。
入る隙がないくらい仲がいい。なら俺はこれから先、彼女をからかうどころか話すことすらなくなるのか…
って俺は今更なに言ってんだよ。フッた時点でもう彼女と関わることなんて無理だろ。どうでもいいと切り捨てただろ。
「…帰る」
「は?急にどうしたの?」
その硝子の言葉に返さず、ただムカムカする苛立ちにその場から立ち去った。
_________
次の日も、その次の日も放課後になれば傑は必ず早く出て、Aの元へと通い続ける。
傑の様子を見ていれば心なしか楽しそうにするあたり上手くいってるんだろう。
親友の恋愛が上手くいってるなら喜ぶべきだろ。なのに胸糞悪くなるのはなんなんだ?
そして、それが何日も続いて我慢ならずにまたAの元へ行こうとする傑を思わず引き止めた。
「なぁ、お前…Aのところ行ってんのかよ」
「なんで悟がそのこと知ってるんだい?」
「あー…お前がもしかしたらAに気があるんじゃねぇーかと思って」
嘘だ。この間、硝子とつけたのがきっかけで知った。
だが、実際その時に気付いてしまった傑のAへの好意。…いや、もしかしたら間違いかもしれない。
そう思いたかった。でも______
目の前の親友は俺から目を逸らしどこか照れくさそうに首の後ろに手を当てて
「よく分かったね。悟がよく彼女に構っていただろう?実はその時から気になってて。もしかして悟、そのことに気づいて最近彼女から距離を置くようにしてくれたのかい?」
勝手な解釈をされて期待の眼差しでこちらを見る。
色々聞きたいこともあった。否定の言葉を吐けばよかった。のに、全て喉の奥に押し込んで
「ッあぁ、そうだ。お前分かりやすいんだよ。さっさとくっつけよ。応援してる」
「…今、初めて悟に対して心の底から感動したよ」
「ハァ?!俺のことなんだと思ってるわけ」
「冗談だよ。ありがとう」
そう言って嬉しそうに笑顔を浮かべる親友に「いいんだよ」なんてカッコつけて、自分の心に嘘付いて。
嘘をついた背徳感か、親友が離れる喪失感か、それとも…Aがとられてしまうという焦燥感か。
何か心がグシャリと押し潰されたように苦しかった。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時