9話 ページ9
夏油サイド
「いっちまった。本当アイツいじりがいありすぎて困るんだけど」
雑魚のくせに生意気 といいつつもクツクツと笑う悟は随分楽しそうだが
私はやってしまったという後悔しかなかった。
いつもの調子で彼女に関わるとついつい意地悪したくなり、彼女のお腹の音に対して思いっきり笑ってしまった…いや、あれは不可抗力か。
彼女を殺す前ぐらい良い先輩でいようと、そして心の懐に付け入り隙あれば殺そうと決めたのだが、
彼女と関わるとどうも調子が狂う。
関わるたびに自然と笑顔がこぼれている自分がいて、こんなにも笑ったのはいつぶりだろう。
「なんなんだ、もう…ッ…フフッ…」
彼女といるのが楽しいと思ってしまっている。
今まで自ら関わる機会がなかったため、ただ一生懸命な後輩だと認知していた程度だったのだが、今回を機に悟がいつも彼女に絡みに行く理由が分かった気がする。
だが、いずれかは殺さなければならない相手。それを今の私は忘れてはならないのだ。
所詮彼女も猿の一人だろ?私たち、呪術師を苦しめる存在に過ぎない。そう、情を移すな。
ただ殺しやすいように彼女に近づいて付け入るんだ。もうお別れする日が近いのだから。
「あー、笑い疲れたわ。傑ー、そろそろ飯食べなおしに行こうぜ」
「…あァ。そうだな」
「なんだよ、急に辛気臭くなって。おねしょしたことでも思い出したかぁー?」
「悟、それはいつの話のことを言っているんだい?幼少期のことで今更落ち込まないよ」
「んだよ、いってみただけだろ。そう睨むなって」
バシバシッと容赦なく肩を叩いてくる悟にニコリと笑いながらも叩き返そうとするとかわされる。ムカッとし意地でも叩こうとしていたらいつのまにか取っ組み合いになっていた。
結局、悟とはこうなるのかと殴り合いながら自分に呆れていると喧嘩を始めて数分後ぐらいに校舎の方からドタドタと聞こえる足音。
「ちょ、なんでまた喧嘩始めてるんですか?!懲りるって言葉しってます?!」
と大声で叫びながらこちらに突進する勢いで走ってくる彼女。
あァ、君はそういえばいつも私たちの喧嘩を止めようとしてくれるんだった…なんて
ボンヤリと思い返してはまるで興味のなかった相手に今更湧き上がる親しみ。
「…ッ」
咄嗟に彼女から目を逸らし、気付かないフリをした。
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Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます!貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです!そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています!応援ありがとうございます!貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています! (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います!夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2020年12月17日 19時