Milky Way 6 (ページ45)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:459,529 hit

244 輝く二つの星ページ45

・

・

展望デッキに出ると、カッと照りつける太陽に一瞬、くらくらと眩暈がした。

・

・

雲一つない、抜けるような青空。

・

まるで、澄み切った水面みたい。

その水面を。

カズを乗せた飛行機が、白く細い雲の帯を棚引かせながらどんどん遠ざかっていく。

・

・

そう。あれは舟。

私とカズを繋ぐ、一艘の舟。

・

・

行ってらっしゃい、カズ。

・

・

私は、この間の花火大会でカズが私にくれたメッセージを反芻する。

・

必ず迎えにきてくれるって言ってくれたことを信じよう。

あんなサプライズをカズが考えてくれたなんて、カズの性格を知ってるからなおさら、今でも少し信じられないような不思議な気持ちになる。

・

あの後、煙と火薬の匂いがまだ漂うあの場所で。

カズは満点の星空を見上げて言った。

・

・

「あの二つの星だってさ、俺たちから見たらすげぇ近くに寄り添って見えんじゃん？

でも実際は何光年だか知んねぇけどさ、相当な距離があるわけよ。

…俺たちも離れちまうけどさ。物理的な距離は、どうしても生じてしまうけど。

でも、気持ちだけは常にAと寄り添っていたいと思ってる。

Aを大切にする。俺にとっての一番は、Aだから』

・

・

どんどん小さくなっていく、カズを乗せた飛行機をいつまでも見ていたら。

私を現実へ引き戻すかのように携帯が鳴った。

・

・

「もしもし、…お母さん？」

母『カズくん、無事に出発した？』

「うん」

母『そう。昨日ね、カズくんから電話があってね』

「カズから？」

母『そうなのよ。…まだずっと先になると思うけど、いつかちゃんと一人前になってAを迎えにいきますからって』

「え、」

母『だからしばらく私達に心配かけるかもしれないけど、見守って欲しいって」

・

・

……カズ……

・

胸の奥の、さらにずっと奥の方が何かに掴まれたようにギュッとなった。

・

・

母『それまでAのこと、よろしくお願いします、って。…カズくん、そう言ってたわよ』

・

・

・

・

先のことなんて、誰にもわからない。

・

もしかしたら。

私とカズにも、私達が予期しない未来が待っているのかもしれない。

・

だけど、これで終わりになんて絶対にしないから。

・

・

・

・

カズと私の未来は、これから始まるって。

私は、そう信じてる。