Milky Way 6 (ページ29)

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228 舞い散る花びらページ29

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小さく固かった桜の蕾が春の気配を感じて膨らみ始める頃。

今年度取るべき単位を全て取得したカズは、予定通り大学に休学届けを提出した。

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その頃、私の所属部署にも一人、新入女子社員が配属された。

去年の私の時と同じように、瀬戸さんが彼女の新人教育の担当となる。

デスクから見える彼女の初々しい背中に、私は時間の流れを意識せざるを得なかった。

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一年。

カズと付き合い始めてから、いつの間にか一年という月日が経っていた。

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カズに誘われた、桜並木。

仕事が終わってから待ち合わせたカズと、食事をした後。

お花見客の喧騒から少し距離を置いて、カズと手をつないでそこを散歩していた時のことだった。

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カズがライトアップされたその景色を切り取ろうと、ポケットから出した携帯を上にかざす。

私も立ち止まり、これでもかと言わんばかりに仰々しく咲き乱れる満開の桜を、下から眺めていた。

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「口、開いてんぞ。笑」

カズに言われて慌てて口を閉じ、もう！と振り向いた。

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「……な、なに撮ってるの」

「Aだけど。笑」

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てっきり桜の花を撮っているとばかり思っていたカズの携帯は、私に向けられている。

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「ナニ急に挙動不審に陥ってんのよ。笑」

「だ、だってカズが私なんか写してるから。…桜を撮ればいいじゃない」

「撮ってるよ？」

「桜だけでいいよ！」

「すげぇ奇麗だからさ、持って行くわ」

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……？

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「Aと桜を、ね。ロスに」

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「こうやってさ、ここで一緒に過ごせるのも後三ヶ月だし。今まで当たり前だと思ってたことってさ、…これからは当たり前じゃなくなるじゃん？」

「…うん」

「それにさ」

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この季節特有の強い風が私の髪とスカートを翻し、私はスカートの裾を手で押さえた。

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次の瞬間。

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そのいたずらな風に煽られた桜の花びらが、一斉に舞い散った。

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夜の闇の中に、一度舞い上がった花びらの一枚一枚が。

ふわりふわりと雪のように舞い降りてくる。

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「うわぁ…！！奇麗…」

「すげぇな…！！」

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しばらくその様子を二人で眺め、そしてカズは私の髪についた花びらを取りながら、目を細めて呟いた。

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「こういう一瞬をさ、…忘れたくねぇじゃん」