Milky Way 6 (ページ11)

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210 涙の跡＊K＊ページ11

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結局俺は、ほとんど眠れなかった。

カーテンの隙間から差し込む、とっくに昇り切った一筋の太陽の光が小さく寝息を立てるAの顔を照らす。

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Aの目尻に、頬に、残った涙の跡。

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これほどAが涙が枯れそうなくらい泣くのを俺は今まで見たことがなかった。

そんなに俺と離れることが悲しいのか、と。

意外だったっつーか、どこかホッとしたっつーか。

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Aの中の俺という存在がデカくなってんのを肌で感じて、すげぇ嬉しかった。

俺のためにポロポロと涙を零すAが、たまらなく愛おしいと思った。

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思わず、詳しい説明をする前に、本能の赴くままにAにキスしようとして。

Aに拒まれて俺は我に返り、それから一通り留学に至る経緯だとか、あっちの大学のこととか、期間なんかを説明して。

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…言ったんだ。

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「…俺のこと信じて待っててよ」

って。

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一瞬Aは目を見開き、そして目を伏せた。

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…なぁ。

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この俺がさ。

Aと会えなくても平気だとか思ってんの？

もしそう思ってんだとしたらオマエはほんとにバカだよ。

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俺はAを起こさないように、目尻についた涙の跡に唇をそっと押し付ける。

ツヤツヤとした真っ直ぐな髪を撫でる。

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昨夜、Aは俺の話を聞いた後、それ以上怒ることもなかったけど納得したようでもなかった。

お互いに疲れて深夜二人してベッドに潜り込んだものの、Aは俺に背中を向けた。

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狭いシングルベッドに二人で寝ること自体が元々窮屈なことで、普通に寝ててもお互いの体のどこかしらが触れる。

直に体温が伝わる距離なのに。

なのに、すげぇ遠くに感じた。

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だから俺は背中を向けたAが泣き疲れて眠るまで、ずっとAの頭を撫でていた。

Aに、Aでいっぱいの俺の気持ちが、ほんの少しでも伝わればいいなと思いながら。

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俺がAの頬に残った涙の跡を伝うように、そこに唇を滑らせると。

Aはくすぐったそうに肩を竦めて、眩しそうに少し目を開ける。

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「おはよう」

「…カズ…」

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Aはボーッと俺を見上げる。

無意識なのか、Aが俺の頬っぺたに手を伸ばして触れた。

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俺はAの上に跨がり、キスをする。

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その時、Aの携帯が鳴った。