行方不明の兄を探します。

捜索２６日目 ページ27

「どうしてここにいるんだ？」

「友達と飲んでたんだ！」

「気づかなかったな....」

「私も」

沙良は自然に気づかなかったと言ってくれた

「A、一緒に帰ろ？」

「ううん、宮本さんと帰りなよ」

「でも.....」

さっき宮本さんと飲めなかったのは私のせい

だからせめて一緒に帰ってほしかった

「俺が送るから気にするな」

「え」

こうなるとは予想してなかった

「成瀬なら安心！よろしくね！」

「ちょ！」

嫌だと言う時間もなく、二人は手を繋いで行ってしまった

「(嘘でしょ、どうしよう！)」

一緒に飲む勇気もなかったのにいきなり一緒に帰るなんて

心の準備ができてない

「早くしろ、置いてくぞ」

「うん....」

私は成瀬の３歩ほど後ろを歩いた

「「.......」」

お互いに無言だった

「あのさ」

先に口を開いたのは成瀬だった

「昨日は悪かったな、急に抱きしめたりして」

「へ」

「俺も色々....」

「色々？」

「なんでもない」

「え」

「(そこまで言われると気になるんだけど)」

それ以上聞く勇気は今はないからやめておいた

「何かさ、いつもより静かじゃね？」

「き、気のせいだと思う....」

私はか細かったけどそう言った

「あっそ」

「(やっぱり成瀬が私を恋愛対象で見るなんてありえないよ)」

心では分かっていたけどいざ目の前で気づくと胸が痛い

「ごめん、成瀬」

「何だ？」

「私寄る所があるからここまででいいよ」

「そこまで着いていくけど？」

「いい」

私は走って逃げた

成瀬といたくなくなった

一緒にいたら何かが溢れ出しそうだったから

「ちょ、おい！」

後ろで叫んでいるけどそれも無視した

耳を塞ぎながら全力疾走で家まで帰った

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