神子柴君と安楽椅子

神子柴君と玉章月と槇嶋千佳 ページ10

玉章月(たまずさゆえ)は其の目を見てみたかった。

神子柴龍巳の目は夜の藍を集めた三白眼寄りの光を通さない目をしていた。

一切の光を受け付けない眼球をちゃんと見てみたかった。

眼球に魅力を感じる月はその面白そうな後輩ともっと仲良くなりたかった。

そうすればこの目をもっと見られると思ったからだ。

しかし彼はやる気のない塩対応、

月はそんな後輩に苦戦を強いられていた。


「お、おはよー！」

「…おざーす。」


会話終了。


(諦めねぇぞ…けどあの三白眼こえぇ…)


刹那主義者であり快楽主義者の月は己の快楽のため神子柴を追うのだった。



槇嶋千佳(まきしまちか)は神子柴龍巳と一度遊んでみたかった。

遊んで、というより会話がしたかった。

他愛ない、普通の会話。

しかし千佳は気が強い上に不器用な性格だった。

授業に来ない神子柴とは会う機会も少ない。

千佳は広い世界に一人きりのような神子柴をずっと気にかけていた。


「神子柴、」

「槇嶋じゃん、あー…学校に来なかったのは悪いと思って…」

「馬鹿、怪我が増えて無くて良かったわね。」


(何か嬉しそうだな…)


もっと素直な言葉が言えればと千佳は練習を繰り返すだけだった。


「目立った怪我はしてなさそうで良かった、って、何で言えないのかな…」

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