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† Rose ページ10

差し出されていたのは、真っ赤な1本の薔薇。
いつから差し出されていたのだろうか。
受け取り、よく見てみると 手元のトゲはほとんど取られていた。安全に考慮されたプレゼントらしい。


剣「失礼ですが貴女のお名前は…?」

『えっ、と、』


おねえさまが教えておいてくれたのでは無いのか
と驚いてしまい、喉が詰まる。
普段は館に篭もり、お買い物をしに村に出ても話し相手は歳をとった人間だけ。
目の前にいるような若い男性と話すのはAにとってはかなり久々な事だったのだ。
それこそ、おとぎ話の王子様に思いを馳せてしまうほどには。


剣「…」


そんなAを見つめる剣持さんと目が合った。
…返事をしないAに対して怒りを覚えているのではないか、と不安になったのだが…。
むしろ幼子や小動物を見るように優しい目でAを見ていたのだ。
それに安心し、ようやく言葉が喉を通った。


『…A、です。森中 A。』

剣「Aちゃん!いい名前ですね。」

『ありがとうございます、剣持さん…!』

剣「…」


何かがお気に触ったのか。剣持さんは顎に手を添えて何かを考え始めてしまった。
感謝の言葉が違ったのでは。若い男性と老いた男性ではやはり使う言葉は変えた方が良いのだろうか…?


剣「…刀也。」

『え?』

剣「刀也おにいちゃん、と呼んでください」

『と、え?』


お兄ちゃんと呼べ、と言った…のだろうか。
確かにそう聞こえた。いや、でもそのような呼び方は家族にするものではないのか?
でも…そう呼んで欲しい、と言うのなら…


『刀也…おにいちゃん…?』


いけない、無意識に手に力が入ってしまった。
ウサギのみるくちゃんから ギチ という音が聞こえた。可愛いみるくちゃんからそんな音は聞きたくない。


剣「…んふ、ありがとうございます。」

『ぇ、どういたしまして…?』


不思議なおにいさんだ。
なんてお話をしていると、階段からドタドタと足音が聞こえてきた。今度こそカザキおねえさまだろう。


カ「かたなさぁあん!?!?」

剣「げ、バレたか」

『おねえさま!!』


おねえさまの後ろには、やれやれ と言った表情をしたおじ様…?が立っている。
出てきてはダメだと言われたのに、結局集会のお客様全員と顔を合わせてしまったのだった。

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作者名:はむ | 作成日時:2023年3月25日 11時

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