結構な策士 ページ40
落胆していたところ、妙に優しい声色で黒木に呼び掛けられた。
｢2人共。
有田にヤイたの？｣
トロっととろけてしまいそうな、甘い目で私達を覗き込んだ。
アーヤはカッと赤くなっていた。
初々しくて可愛い。
私は多分、表情筋一つ動いていない
…と思う…自信無くなってきた。
なんかニヤけたら負けな気がしたし。
｢その必要はないよ。
だって君達も、充分可愛いからさ。｣
その一言で私達は目がまん丸になった。
｢もし、Aやアーヤに事件が起こったら、
俺たち何をおいても真っ先に君らを助けるぜ。｣
そうだよな、と押し付けるように皆を睨んでいた。
皆はビックリしてたけど。
小塚なんて、口をカパッとあけたっきり。
でも一応、皆口篭りながらも必死そうに答えていた。
｢あ、ああ…｣
｢もっ、もちろんさ…！｣
ふーん。
なーんか、腑に落ちないね。
side彩
私は羞恥心で死にそうだった。
でも隣のAちゃんは不満気。
それどころか、瞳をキラッと光らせて
何か企んでいるようにも見える。
私の予想は的中した。
いきなり何の前触れもなく、Aちゃんは
黒木君の鼻と自身の鼻がつきそうな距離に、
ズイっと顔を近付けていた。
意地悪そうな表情をしながら。
｢じゃ、聞くよ〜？
私とアーヤが危険だったら、どっちを先に助けんの？｣
私を含め、皆は硬直した。
あの、いつも余裕そうな黒木君でさえも。
無音な空間で、息が詰まる。
私の呼吸音でさえ、聞こえそうだもの。
その様子を見て、Aちゃんは満足気に笑った。
｢あははっ…
そこは頭を使いなよー、皆。
二手に分かれて助けに行くって回答、求めてたんだけどな？｣
無理だよAちゃん。
あの緊迫感のなかで、そんなこと考えられない。
｢…
これは俺、どうにも勝てないね。｣
両手を上げ、降参したようなポーズをとる黒木君。
｢うむ、宜しい。｣
それを面白そうに見ているAちゃん。
まだ固まっている他の皆。
たまにAちゃんって、黒木君より策士なところあるよね。
……もっと知りたいな、Aちゃんのコト。
いや、Aちゃんだけじゃない。
探偵チームKZの皆のこと、よく知りたい。
改めて、そう思ったかもしれない。
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作者名：イチゴミルクティ。 | 作成日時：2021年3月16日 20時
