結晶が十三つ ページ15
その夜、またグルッペンとトントンさんに会って話したが怒っている節もなく、私は少し安心しながら大浴場に1人皆さんとは時間をずらして入っていた。
『ふぅ…』
ぱしゃん、と尻尾で水面を軽く叩くように動かす。翼があるから大きな石畳の風呂には寄りかかりにくいので、少しふちからは離れて翼も時折伸ばしながらゆっくりと時を過ごしていた。少し動く度に結晶が石畳に擦れて音がする。
『…いい匂いだな。』
乳白色のお湯はなんだかとても落ち着く香り。その濁ったお湯が尻尾や肌に生えている結晶に絡んで照明で鈍く光らせている。私の結晶は透き通った水色で、先の方が金色になっている。作られた存在と言えど、これだけは私の自慢。誰にも持ちえない、私だけの宝石だ。
『そういえばあのシャンプーとボディーソープたち…どれ使っていいのか分からなくて1番端っこにある赤と黒のやつ使ったけど大丈夫だったかな。』
赤と黒、やたらと高級感のあるボディーソープとシャンプーで、一足先に目がついたのから使ってしまった。
『後で誰のか聞いて、必要あれば謝ろう。』
そう思いながらお風呂に浸かっていると、突然がらりと脱衣所から浴場に入る扉が開く音がして、私はびくりと肩を跳ねる。
Ut「…あれ?Aちゃんやん。」
『鬱、さん…』
そこには腰にタオルを巻いて立っている鬱さんが居て、私は咄嗟に近くにあったタオルを引き寄せる。
『…あの、』
Ut「いやぁさっきまで書類仕事やっててな?ついみんなより遅い時間に風呂になってもうたわ。」
私の話を遮るように話し、掛け湯をしてから私の隣に腰を下ろした。私は尻尾が鬱さんに当たらないように少し自分の方に寄せる。
『ごめんなさい、私上がります。』
Ut「えー?ええやん少し話そうや。別に手は出さへんよ?」
『……』
その誘いにも私は乗らず、上がりながらタオルを素早く巻く。
『…体に色んな女の人の香水や体臭を纏わせてるあなたの言葉はいまいち信用できません。』
Ut「…えっ」
私はそれだけ言うとくるりと踵を返し出口へと向かう。扉を開いたところで私は鬱さんに腕を掴まれた。
Ut「ちょ、ちょっと待ってやAちゃん。何か勘違いしとるんやない?俺別に…」
『だって、あなたは、』
確かにこの人には自覚はないだろう。だって、恐らく鼻がいい人じゃないと分からないから。すると私が言いかけたところで、次は脱衣場の入口ががちゃりと開いた。
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すみれいん(プロフ) - きゅるきゅる、ウルル…ここめちゃくちゃ好きです。 (2020年12月8日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
×(プロフ) - こんなに面白い作品が読めてうれしいです!応援してますヽ(^o^)丿 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 2c8e323fdc (このIDを非表示/違反報告)
(´ー`*)ウンウン - 好きです。(唐突)頑張ってください。 (2020年11月25日 14時) (レス) id: 79aefbbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ラリー - 面白いんじゃあ...続きが気になって死んでまう...(訳:この作品とても好みで面白いです!更新頑張って下さい!) (2020年11月24日 22時) (レス) id: 4e3832928c (このIDを非表示/違反報告)
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