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「A」
我慢の限界に達したピアースは、
部屋の入り口で腕組みをして
2人のお喋りに割り込む。
「はい!警部補!」
いきなりの直属の上司の登場に
驚きながらも、ぴしっと姿勢を正す。
隣ではルシファーが
鬱陶しそうな視線を向けてくるが
全面的に無視する。
「俺のデスクに頼んでおいた書類が
まだないんだが?」
「あれ…おかしいな、
確かに今朝警部補の机に置いたんですが…」
「俺が嘘をついてるとでも?」
片眉を上げてAに問うと、
案の定慌てて彼女は首を振る。
「いえ!違います」
「まあ、もしかしたら他の書類と
紛れているのかもしれない。
何せどこかの誰かのせいで目を通さないといけない始末書が多いからな」
嫌味たっぷりに言うが当の本人は、
いかにもどうだ凄いだろうと言い出しそうな顔をしている。
「探してきます。
ルシファー、ハラハラするお話聞けて
とても楽しかったです」
ルシファーは先程と打って変わって
爽やかな笑顔を見せ、
まるでピアースに見せつけるように
Aの手を優しく握った。
「光栄だ、お仕事頑張ってね」
「ありがとうございます」
ピアースに軽く一礼をし、
Aは埋もれた書類の発掘に出発した。
彼女を肩越しに見送り、
いまだにひらひらと余裕で
手を振っているルシファーに
一歩近づく。
「どういうつもりだ」
「何が?」
「とぼけるな、あからさまに
ちょっかいかけてるだろ」
鋭い視線は決して緩めない。
「別に理由なんてないよ、
あえて言うなら魅力的だからかな。
純粋そうだし、そそられる」
にやにやとした笑顔を貼り付けた顔を
力の限り引っ叩いてやりたい衝動に駆られた。
「いいか、ハッキリ言っておくぞ。
お前にどんな魂胆があるにせよ、
Aに近づくな。
遊び相手なら他にも腐る程いるだろう」
「おや、知らなかったよ。
君たち付き合ってたの?」
「…いや」
「じゃあ僕が手を出しても問題ないはずだ」
「ふざけるな。
もしAに指一本でも触れたりしたら」
食い気味にルシファーが言い返す。
「どうする、僕を地獄に還す?
悪魔を脅すなんてご立派だな。
君こそどうして彼女に執着してるんだ?」
「お前には関係ない」
自分でも自問していることだ。
俺は何故彼女にこんなにも執着している。
答えは長い間出ていない。
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作者名:若松 | 作成日時:2021年9月28日 14時