4〜帰り道〜【番外編】 ページ41
「因みにどんなとこがいいの」
「ええ……いや、なんかね?いい子なのよ、すごく。最初会って話した時、この子が俺のファンでいてくれてよかったって思った。俺結構無茶振りしたと思うんやけど、全部頑張って話してくれたから」
その時電車が来た。少し冷えた風が横を吹き抜けていく。
「しかもな、ちゃんと会ったことすら無いような子に憧れてもらえて、それでこの世界にまで入ってくるってすごいやん。なんかすごい、びっくりしたし、俺幸せやなって」
幸せ、という言葉に力が入っていたと感じたのはきっと気のせいじゃない。
Aちゃん、大切に思っとるのは、Aちゃんだけじゃなかったぞ。
「そうか。ええ子がファンにおってよかったな」
「きっといくみんのファンの子にもおるよ」
「なんやお前嫌味か」
「ちゃうし」
二人で笑い合いながら電車に乗った。
「もう二人で遊びにでも行ってしまえ」
「ええ…それは、ハードル高いわ」
「インドアなんやからたまには出たらええねん。映画にでも行け映画にでも」
「それも室内だわ」
そう突っ込んでから、しばらくし、宏規の雰囲気はどこか静けさを纏い、宏規自身もどこか一点を見つめ始めた。
アナウンスと共に電車もゆっくりと動き始める。
「いくみんはさ、もし、もしね、俺がAちゃんのことをさ、その……好きになっても、いいと思う?」
なんでそんなことを聞くのだろう、と思ったが、宏規の目線の先を見て分かった。
少し遠くに、3rdの氷帝メンツの缶バッジが数え切れないほどついた、いわゆる痛バッグを持っている1人の女性がいた。目を細めてみると、跡部が多く見える。跡部が好きなのか宏規のファンなのかは計れないものの、きっと公演中には跡部を目で追っているのだろうと思わせた。
こういう仕事をしている以上、誰か1人を好きになるというのは難しいのだと思う。宏規のように、界隈で注目されている存在なら尚更だ。
「いいんやないか。この仕事をしとっても、人を好きになるのは悪いことじゃない。まあ気もつけなあかんのはわかっとると思うけど」
そっか、そうだよな。
そう呟くと、宏規はありがとう、とそれまで下げていた目線を俺の方に上げて言った。
穏やかな目をしていた。
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ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます!長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します! (2019年10月25日 22時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています!無理せず頑張って下さい! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます!最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです!!続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます!最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまめ x他1人 | 作成日時:2019年8月27日 4時