38話 ページ40
軽蔑＿＿＿
まさか鉄虎くんからそんな言葉が出てくるなんて
思わなかった
「いつまでもうじうじしてる弱虫！女の腐ったような軟弱者！」
『ちょっと、鉄虎くん…』
「姉御はいつもそうやって翠くんを庇って…だからいつまでも弱虫なんスよ翠くんは！翠くんを見ていると昔の俺みたいで苛々するんスよ！」
言い過ぎたと感じたのか静かに謝る鉄虎くん
「けど隊長や姉御の貴重な最後の1年を俺たちに捧げて鍛えてくれたんスよ…それは全部徒労スか？」
毎日千秋と翠を迎えに行ったけど…
翠にとっては大きなお世話で迷惑だったのかな
そう考え始めた瞬間翠の肩から手が離れてしまった
今こうして支えてることさえ翠にとっては…
「翠くんにとっては鬱陶しいだけだったんスか？だったら早く言うッスよ！」
こんなこと思いたくないけど…
翠が「鬱だ」とか「面倒」って私たちが言わせてしまってたならって思うと胸が締め付けられた
「だったらこの人たちの1年間を全部貪り食う前にさっさと制服もヒーローの衣装も捨てて…
＿＿＿消えちまえばよかったんスよ！
翠くんはいつまでもガキのつもりなんスか！？」
「もうよせ、南雲」
「とめちゃだめです、ぼくたちが『おんぶ』しなくてもこのこたちは『じぶん』であるけます」
「高峯、俺達は1年間お前を苦しめていたのか？」
『泣いてちゃわかんない…正直に教えてほしい』
「先輩、俺にそんな価値あると思います…？」
翠は中学生の頃目立たない子だったみたい
「無駄にデカかったしこういう見た目なんで、女の子から興味を持たれることはあったんだけど…中身、本当に普通なんで…ちょっと話すだけで幻滅されるし」
私や千秋も同じだと思ったんだろう…
「見た目だけで心から全部愛してくれる人なんかいるわけない…せいぜい最後まで見放さないのは家族くらいですよ」
翠に信頼されていなかったという苦しみと
翠の悲しい話を聞いてこちらまで泣きそうになる
「守沢先輩もA先輩もみんなとお別れするのが寂しくて一人で泣いてたんだよ？そんな人たちの貴重な時間を無駄にしたんだ！俺には返礼祭なんて無理だよ…」
再び大粒の涙を流しながら翠は言い続ける
「もらった分の恩をたった1日で返しきれるわけないじゃん！一生かかっても無理だよ！」
恩返しなんていいのに…
「けど楽しかったんだ…本当はいつも幸せだった」
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作者名：愛音 | 作成日時：2018年5月8日 0時
