大好きな笑顔を◢◣ ページ15
A
名前)『ぁ、りが、とう…?!』
小さくお礼を言うと影山は大きく溜息をつき、私の頭を支える手をグッと引き寄せる。
コツンとおでこに少し硬い感触が訪れ、気付いたら影山の肩に顔を埋めるカタチになっていた。
田中「うぉぉお!!影山カッケェ!!」
菅原「うひゃー少女マンガみたいだべや!!」
澤村「2人とも大丈夫か?!」
清水「奥村ちゃん!!」
日向「きゅ、救急車っ!!」
月島「頭打たなくて良かったネ。これ以上頭悪くなったら手の施しようが無いし。」
山口「大丈夫?もしかして貧血とか…??」
ほかの部員達が走りよってくると影山は抱きしめていた手をそっと解いた。
影山「痛いトコないっスか?ちょっと触るんで痛いトコあったら言ってください。」
そう言って身体を離して私の顔を両手で包む。
影山「頭、大丈夫スか?」
月島「…いや、聞き方。」
突然のスキンシップに声が出ず慌ててコクリと頷く。
恥ずかしすぎる。
周りを見てもどうやらこの状況から助けてくれる人は居ないらしい。
影山の行動にキャーと乙女みたいな反応をしてる菅原さんや田中さん。なんかイライラしてるっぽいメガネクンとそれを心配してる触覚くん。
澤村さんと清水先輩は心配そうに眉を八の字にしている。
影山「肩と腕。違和感ありますか?」
その間にも影山は顔に添えた手を肩に滑らせ腕をなぞる。
その手は手のひらへと進む。
A『…ッ?!』
左手に影山の手が触れた瞬間、チクリと痛みと恐怖が走る。
ーーあ、しまった。
そう思ってももう遅くて。
ビクリと肩を揺らしてしまえば影山はそれに気づく。
影山「左手。痛いですか?床に着いてたの左手ですよね?その時に捻ったとか…」
そう言って私の左手を両手で包んでくれる。
心配してくれるのは嬉しいけど、
左手の痺れと一緒に“あの時 ”のことがフラッシュバックする。
人気のない放課後の非常階段。
濡れて身体に張り付き体温を奪う重い制服。
反転する景色。
私を見下ろす集団。
宙に浮く自分の身体。
A『いやっ…!!』
肩で息をして、勢い良く影山の手を振り払う。
気付いた時にはさっきまでの笑顔はなくて。
あぁ。私はまた君から笑顔を消してしまったんだ。
大好きな君の笑顔を。
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作者名:ツナ缶本仕込み | 作者ホームページ:http://@ya love
作成日時:2021年10月1日 20時