初恋の幻影【現代篇】

万事屋ブルース（１） ページ28

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仕事の依頼を終え、一息着いたところで向かった先は、万事屋の一階に併設されているスナックお登勢。

ババアに酒を頼み、その日の疲労を紛らわすようにそれを嗜む。


Aが万事屋で生活を始めて、一週間が経過した。

長年の友と云えどAの性格を踏まえてみれば、おそらく俺たちに気を遣い、気持ちを休める場として万事屋に住めるだろうかと心配していたが。




「俺のが未だに慣れねぇんだよなァ…」




人の心配をするどころか、俺の方が不慣れな生活にどうしたものかと頭を抱えている。




「惚れた女と同棲始めて浮ついてた男が早々に溜め息とはねぇ。男の性(さが)には逆らえないってかい？」

「…浮ついてなんかねぇよ。笑えねー冗談言ってんじゃねぇクソババア」




皮肉な言い方に不満を持ったのか。

タバコを吹かす老婆が鬼の形相で俺を睨んで訴えかける姿にいそいそと視線を逸らした。


だって仕方ねぇだろ？
旬の女が家にいるってだけで大問題だっつーのに、ましてそいつが好きな奴だなんて生き地獄じゃねーか。

問題どころかもはや立派な弊害だからね。
俺の息子もすでに限界突破しちゃってるから。
おかげで毎朝トイレでスパーキングだコノヤロー。




「銀時様。何かお悩みですか？」

「悩みで済めば苦労しねぇよ。男にとっちゃ永遠の課題だ」

「私で良ければ、相談に乗りますよ」

「代ワリニ100万円寄越セヨ、コラ」

「てめぇは100円の価値で十分だ！」




たまの横で脅迫するキャサリンの顔面に、手持ちの100円を思い切り投げ付ける。

そんなやり取りにやれやれと息をつくババアの相好。




「男ってのはどうしてこうも不器用なんだろうね。どっかの誰かさんとそっくりだよ」

「だったらそのどっかの辰五郎様に共感してもらいてぇモンだな」

「死人に口無しさ。Aがアンタに見向きもしないのは、あの子と向き合う心がないからだろう」




そう言ってばあさんは、酒を注いでくれる。
いつになく、ババアにしてはマトモなこと言ってやがる。

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