▫️さよなら、私の初恋 ページ21
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一日が経つのも早いもので。
サッカーの練習が終わり、片付けや部員の帰りを見送ったあと、声をかけてきたのは凪くんだった。
「A、今日帰りどうするの?」
「あ、えっと…」
「悪い、凪!今日は一緒に帰れねぇ!Aと帰る約束してんだ!」
しどろもどろに返答に困っていると、凪くんの後ろから玲王が笑顔で駆け寄り、すぐさま私の手を取った。
ーー違う。ここで流されちゃダメ。
言わなきゃ。
「…玲王、あのね!」
「ちょっとこいつと話があってさ。心配しなくても明日は送ってやるからな〜」
「ねえ、玲王、」
「じゃあな、凪!」
「玲王聞いて!!!」
一方的で聞く耳を持たない彼に訴えるように声を荒らげる。
少しだけ瞳が揺れた玲王のその表情は先程の上機嫌な様子とはガラリと変わり、不穏な空気が漂ってくる。
「…なんだよ」
「玲王ごめん。私…やっぱり一緒に帰れない」
「なんでだよ…別に一緒に帰るくらいいいだろ」
「私、もう玲王の恋人じゃないんだよ」
その言葉を聞いた玲王の指がぴくりと反応する。
玲王が帰りに私に何を言いたいのかなんとなくわかってた。
玲王の想いも、何となく気づいてた。
でもーーー
「私たち、もう終わってるんだよ」
あの頃にはもう戻れない。
これ以上玲王を期待させたらダメ。
終わらせないと。彼のためにも、彼の夢の為にも。
「…だからなんだよ。それがなんだってんだよ!!!」
「玲王…」
「俺は!!俺はお前のことずっと……っ!!」
強く、強く。
私の手を握りしめるその大きく無骨な手はあの頃の温もりと違って冷たくて。
「……もういい。好きにしろ」
玲王は唇を噛みしめながら言いかけた言葉をぐっと飲み込み、私の手を離すとそのまま背を向けて行ってしまう。
どこか小さく見える玲王の背中。
覚悟を決めたつもりなのに。
込み上げてくる感情に追いかけたい気持ちをぐっと頑なに抑える。
「…ごめんね、凪くん。みっともないところ見せちゃって」
私のことなんか二の次だ。
二人の過去を知りながら今の状況を見ていた凪くんに変に心配をかけてしまったかもしれない。
そう思い、笑いながら謝罪をすると凪くんの表情は怪訝に曇っていった。
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宇治(プロフ) - いのりさん» いのりさん、ご無沙汰しております♪お優しいお心遣い感謝です(泣)励みになります…まさかこんなにスランプに陥ると思っていませんでした…。凪くん楽しく執筆させていただきますね!ありがとうございます♪ (2023年2月17日 13時) (レス) id: 7205c6bdcb (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 宇治さん!こんにちは!スランプって大変ですよね…。ゆっくり宇治さんのペースで大丈夫ですよ!応援してます♡ (2023年2月17日 7時) (レス) @page26 id: 61b0845b42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2023年1月28日 17時