【銀魂】すみません、彼氏ください (ページ5)

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わたしがここに来て二本目の煙草に火をつけながら、その人はわたしを真っ直ぐと見た。
鋭い視線はわたしを貫く。

「あ、えっと、でもそれしか知らないです」

視線が鋭すぎてこわい。山崎さんの影に隠れるようにして、言い訳のようなものを紡いだ。
山崎さんが苦笑いする気配がして、煙草の人の名前を呼んだ。

「土方さん、怖がってますよ」

(土方さんって、言うんだ)

少しずつ名前を知っていく。
山崎さんは土方さんにそれだけを伝えて、わたしに向き合った。微笑むその瞳の奥が、少しだけ悲しい色を含んでいるような、そんな気がした。

「ここはその噂通り彼氏を買えるお店。お駄賃はいらないよ」
「いらないんですか!?」
「ただし――選んだ彼氏を落としてね」
「んん……？」

山崎さんの言葉の意味がわからずに首を傾げる。

(落とす？落下？)

落下させてどうするんだ、と自分自身にツッコミを入れながら、山崎さんからの説明を待つ。
しかし、その続きを説明したのは山崎さんではなかった。

「そのまんまの意味でィ。俺たちゃ人間ですぜ？ただの商品にされちゃ困りまさァ」

携帯をいじっていた独特な喋り方をする人の説明に、納得する。
確かに彼らはロボットでもなければアバターでもない。れっきとした人間だ。

「あの、落とせなかった場合は……？」
「返品かな」

微笑みながら山崎さんが言う。その崩れない微笑みが少し怖く感じた。

「返品って、」
「そのまんまの意味だよ。この店に返してくれたらいい」

そんなの、

(そんな、物扱いみたいな言い方)

「それがこの店のやり方だ。お前ェが口出すことじゃあるめェよ」

眼帯の人が淡々と紡ぐ。
温度がなくて、どこか諦めているように聞こえた。

「人身売買みたい、ですね」
「買おうと思ってやってきたお前も同罪だよ」

何も言えなかった。うん、確かにそう。
噂は噂だからと軽い気持ちでやってきたのはわたしで。実際こんなお店なんて知らなかった、は無責任過ぎるだろうか。

だんだんと落ちていく気分を打ち破ったのは、今まで一言も発さなかった彼だった。

「で？なんでもいいから進めてくんない？」