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勢いよくドアを閉めて出ていってしまったAに動揺し、どうしたらいいのかが分からず冷や汗ばかりを流し、ドアの前で立ち尽くす竜胆。

少し前からAが我慢してくれていたのは分かっていた。自分のせいで彼女が嫌な思いをしてるのも気付いていたのに、Aが何も言わないなら大丈夫、なんて思っていたことを、今猛烈に後悔している。

今まで彼女に誤魔化さずに本当のことを言えるタイミングなんていくらでもあった。でも、嫌われたくないなんて自分の身勝手な理由なせいでAに無理を強いていたことに、彼女が居なくなってやっと気付いた。



「ごめん」


もうAは出ていってしまったドアに向かって謝った。ここで謝ったところで本人には届かないのに。


あの時、もっとちゃんと腕を掴めばよかった。初めてAの本音を聞いた気がして、ショックで言葉が出なかった、なんて。本当に言い訳じみている。


今追いかけても、きっと彼女は話も聞いてくれないし、自分も冷静に話せない自覚があって怖かった。
上手く自分を律することの出来ない自分が怖い。
大切なものを前にして、自分は酷いことを口にしてしまいそうで不安になる。

どうすればいいのか分からず、玄関に立ち尽くしていたとき、突如、ポケットの中のスマホからバイブ音が聞こえ、我に返る。
スマホの画面には『灰谷蘭』の文字。


『竜胆、オレ今さァ_ 』

「……兄ちゃん、オレ、Aのこと怒らせちゃった…… どうしよう」


蘭の話を聞かずに、オロオロと焦る竜胆の声に、彼女が出ていってしまったんだろうと大方予想のついた蘭。


『はァ〜?そういうときは追いかけろよ…… オマエがAちゃんのこと嫌いになって喧嘩したわけじゃないんだろ?』


呆れながら蘭は涙声の竜胆に言った。
竜胆はわかった、ごめんとだけ言い、通話を切った。

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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…!そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…!続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます!そして、更新お疲れ様でした! (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Alice | 作成日時:2021年9月19日 20時

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