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買われた 5 ページ7

『い、泉さん…』

「なに緊張してるの。早くこっちにおいで。」

『で、でも……』

「大丈夫、……優しくするから」




 甘い低音ボイスに耳を侵食され、思わずぽわりと頬に紅を散らせた私。そのまま恐る恐る泉さんがいるベッドに座ると、優しく抱きとめられた。




『……あ、あの、…。』







「今日から俺の抱き枕なんだから喋んないでよねぇ。抱き心地最高」

『…はぁ。』




 美味しいご飯を食べ、連れてこられたのは寝室。お洒落で物がきちんと整理された部屋に感心しつつも、今私は、泉さんの抱き枕と貸していた。

………最初の台詞は無意識に交わしたのだが、策士な彼にまんまと乗せられてしまった。
解せぬ。



「なに、もしかして期待した?」

『全然してないのでご安心を』




 っというか耳元で喋らないで下さい、くすぐったいです。

そう思いながらも言わない。言ったら最後、余計耳を弄られるのは分かってる。この人のことだし。



逞しくも、程よい筋肉がついた胸板と腕に後ろから抱き止められじんわりとした温かさが募る。
男の人と、こうやって密着して寝るのなんて初めてだから居心地が悪い様な…。




『……寝にくいです…』

「少しは我慢しなよ、もしかしたらあんた今頃外で寒い中寝てた可能性もあったんだからねぇ」

『……』



 答えながら、少しだけ身動ぎをした泉さんがクスクスと笑う。

この人こんなに笑う人だっけ?昔は表情固くてあんまり笑う人じゃなかったけど今はどことなく柔らかい。



『…い、泉さん…』

「んー?なぁに」



 私の呼び掛けに答えつつ、間延びした応答をした声に少なからず笑いつつもほっと息をつく。



『今日は、本当にありがとうございます…。泉さんがいなかったら、私はあのまま野垂れ死んでいたかもしれません』

「……」


 ポツリと零した私の声に反応し、ぎゅうっと抱き締める力を強めた泉さんが、首筋に顔を埋めてくる。



『……猫みたいですね、可愛い』



 思わず呟く。



「……こんな飼い主はいらない」

『…ふふ、そうですね』


「…………。」




 それから、私のお礼の言葉に何を思ったのかは知らないが、そのまま寝息を立てた。
規則正しい呼吸音に少なからず安心を覚える。



……まさかこうなる事態になるとは、人生は恐ろしいものだ。





そう思いながら、私は瞼を閉じたのだった。









「……猫、ねぇ……」

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紅茶 - めっちゃ良いです!こんな小説まってましたっ!是非続きが読みたいです、これからも頑張ってくださいヾ(*・ω・*)ノ (2019年10月13日 20時) (レス) id: dc12212b23 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - こんな神作品初めて見ました!!ヤバイくらいに面白いので、これからも更新頑張ってください!!!!! (2019年9月27日 11時) (レス) id: aed030ecf9 (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - ななさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しい限りです!ご期待に添えられるように頑張ります! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - お菓子なこいしさん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 神っすね!ヤバイですよこの作品!更新楽しみにしています! (2019年9月10日 0時) (レス) id: cda48c16bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒。 | 作成日時:2019年8月24日 18時

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