買われた 1 ページ3
聞こえてきた声に、ビクリと肩を震わせてギギギ…と機械のように後ろを振り向く。
「あんた、こんな所で何してるわけ?」
その言葉、そっくりそのままお返しします。
私の後ろには、御曹司達も声を揃えて喝采を上げ、思わず見惚れる美貌の持ち主。今現在人気のモデル、アイドルの瀬名泉だ。
私が何故そんな人と知り合いなのか。
理由は簡単、彼らと同じ高校で専用プロデューサーであったからである。
もう昔の話だが。
『…泉さんには関係ないです』
「相変わらず生意気な後輩だよねぇ」
『もう貴方の後輩じゃないです』
「…」
もうほっといてくれ、惨めになる。
そう思いながらベンチに顔を填めて「…ほっといてください」とくぐもった声で告げた。
すると、隣に座った音が聞こえて内心慌てる。なぜ、言葉を無視して座ったのか。
「…さっきの言葉、本当?」
『っ……。』
「答えなよ。別に話聞くぐらい良いでしょ」
聞いて、たんだ。
静かに鳴る低音の声が、鼓膜を震わせて訴える。あぁ、もう。泣きたくなる。
今の私に情けと同情は要らない。
けど、誰かに頼りたくてしょうがないんだ。
『…ほっといて、って言いました。』
「今にも泣きそうな奴ほっとくほど、俺も腐ってないから」
恐る恐る視線を向ければ、「…やっとこっち見た。相変わらず不細工な顔だねぇ」と言い、困ったように笑われた。
『……』
「……話したくないわけ?質問だけは、答えて欲しいんだけど」
話したくない。話すつもりなんて、ない。
『……お金、ないんです。父が無くなって、借金回っちゃって』
こんなに惨めな姿、誰にも晒したくなかった。晒したら、負けだと、思っちゃうから。
『…惨め、ですよね。誰にも話したくなかったんですけど、泉さんが優しくしちゃうから』
『だから…、』
「…もういい」
だから、誰にも見られたくなんて無かったのに。
静かに涙を流して、また膝にピッタリ付けた。
呆れられた。
もう、この空気が怖くて目を開けられない。
そんな時、
「俺があんたのこと、買ってあげる」
そう、言われたのだ。
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紅茶 - めっちゃ良いです!こんな小説まってましたっ!是非続きが読みたいです、これからも頑張ってくださいヾ(*・ω・*)ノ (2019年10月13日 20時) (レス) id: dc12212b23 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - こんな神作品初めて見ました!!ヤバイくらいに面白いので、これからも更新頑張ってください!!!!! (2019年9月27日 11時) (レス) id: aed030ecf9 (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - ななさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しい限りです!ご期待に添えられるように頑張ります! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - お菓子なこいしさん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 神っすね!ヤバイですよこの作品!更新楽しみにしています! (2019年9月10日 0時) (レス) id: cda48c16bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒。 | 作成日時:2019年8月24日 18時