前世で鬼殺隊の一隊士だった私は今世でも一生徒として過ごしたい

仲良くなる為 ページ20

ぼんやりと過去を思い出した。


私は前世であの人とそれなりに良い関係が築けていた。

けど宇髄夫人達とも良い関係を築けていたかと言うとそうでもない気がする。



例えば私が音柱様とご飯に行くと大抵後から夫人達が合流した。


他にも宇髄家と温泉旅行に行った事があったが、私はほとんど宇髄夫人達といた。

私は旅行中音柱様とは十分くらいしか話さなかった。



前世で夫人達は、やっぱり私が音柱様を取らないように少し気を張っていた所があるのではと思う。



私は音柱様とどうこうなりたいとか、そんな事を思った事は一度もない。



前世では音柱様の上の人間としての在り方が好ましくて、あの人の部下として近くに居続けた。


けど『俺は神だ！！』と自称するような男と結ばれたいとは思わなかった。本当に。



今世はぜひ宇髄夫人達と仲を深めたい。


その為に今世では音柱様とは美術教師とその担当クラスの女子生徒くらいの簡潔な関係にする。



今は女子生徒なのに宇髄先生の授業で下を向いていたら逆に浮くのでは、と考えて他の女子生徒と同じように顔を凝視していた所だ。


もうすぐ授業終わるけど全然飽きない。

相変わらず足長いなあ、あの髪目立つけど教師的にだいじょ＿＿＿＿＿。



パチリ。

音柱様と目が合った。


ひゅんと音が出そうな勢いで下を向いた。


その後気づいた。

いや今の下の向き方は不自然すぎたまずい！！！



｢おい、お前｣

｢ひゃいっ｣


音柱様が恐らくというか、確実に私の事を呼んだ。


心臓が凍りついてまともな返事が出来なかった。

だがここはどうにか乗り切らねばあああ！！！


｢先生ー、Aは伊達男耐性が無くて動揺しただけなんで許してやってくださーい｣


覚悟を決めて口を開けたら、先に擁護の声が響いた。

顔を上げるとゆうちゃんがこっちを見ていて、小さくニヤッと笑った。


ゆうちゃんが助けてくれたんだ！！！


音柱様は頭をガシガシ掻きながら呆れたような声で言った。

｢いや別に怒ってねえけど、地味に傷つくからやめろよ｣


｢…はい。すいません宇髄先生｣

私はぺこりと頭を下げた。


ほっとしたのも束の間、音柱様は名簿を取り出した。


あ！名前はチェックするんですね？？？？？？

冷や汗が溢れ出てきた。


名簿を見ていた音柱様が突然ガバっと顔を上げて私の方を見た。


キーンコーンカーンコーン＿＿＿＿＿。

｢起立｣

授業が終わった。

あー……もっと上手に過ごしたい。

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