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#10 ページ16

久しぶりのオフ。


イケブクロに来てしまっていた。


そして見かけてしまった。


路地裏で、二郎と三郎が不良たちにやられているのを。


怖い。


でも。


俺があの家を出ていった理由は。


一郎、二郎、三郎に幸せになってもらうため。


俺がいくら傷ついても構わない。


護身用に渡されていたヒプノシスマイクを握りしめ、路地裏に入る。


『……多勢に無勢。卑怯ですね。』


ふわ、と微笑みながらフードを被り直す。


10人以上いるだろうか。


不良たちの好奇の視線が突き刺さった。


「ガキかよww今なら見逃してやるからさっさと逃げな〜w」


『……すみませんね。俺は自分が傷ついてもこの子たちを守る義務がある。』


男たちの怒号。


マイクの電源を入れる。


誰も、救われない。


耳を塞ぎたくなるような言葉ばかりをぶつける。


はっと気づいたらもう男たちは倒れていて。


二郎と三郎が真っ青な顔でうつ伏せになっていた。


意識はかろうじてあるようだ。


『すみません、大丈夫ですか?』


「……い、え…あの、ありがとうございました」


二郎の方がなんとか立ち上がって礼を言う。


『気にしないでください。こちらこそ、すみません。』


小さく謝り、歩いて三郎を起こそうとするが二郎まで倒れてしまう。


慌てて駆け寄り、二郎を支える。


『あの、よろしければ、お家まで案内していただけませんか?送りますよ』


二郎が断りかけるが、気を失ったままの三郎を見てこくりと頷いた。


三郎を背負い、二郎を肩で支える。


「ここ、です……」


懐かしい、山田家。


チャイムを鳴らせば一郎の懐かしい声。


思わず、涙が溢れそうになるがぐっと飲み込む。


扉を開けた一郎は弟たちの姿に目を見張った。


「二郎‼三郎‼」


二郎を肩で支え、家に入れた後、三郎を背負った俺を家の中に招き入れる。


2人を寝かせた後、リビングに招かれる。


「俺の弟たちがすみません……」


頭を下げる一郎にいえ、と微笑みかけ、フードを取る。


『お気になさらず。寧ろ、守りきれなくて申し訳ありませんでした。』


すっと謝れば一郎が慌てるような声。


俺は。


もう、山田家長男じゃないのに。


「あ、頭をあげてください。」


頭を上げれば一郎の顔が真っ赤になる。


「え、あ、う、え……?」


言葉にならないような声。


「リンさん……⁉」


違うよ。


山田零華だよ。


そう言う権利は俺にはない。

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ぷにぷに左衛門 - 続きが楽しみです! (2020年12月14日 20時) (レス) id: b1fc0b4e72 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - とっても面白いです!もう更新はしないのでしょうか? (2018年12月16日 23時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
春日音尾(プロフ) - クロりんごさん» ありがとうございます。分かりにくくてすみません、男主です。レス、って言うんですね。初めて知りました……これからも読んでいただけるとありがたいです。 (2018年11月8日 15時) (レス) id: 9bf1cb7bb4 (このIDを非表示/違反報告)
クロりんご(プロフ) - タグに男主って書いてるんですが、これは女主なのでしょうか?後、レスは普通に投稿時間の後にある(←レス)という所を押せば出来ますよー。 (2018年11月8日 14時) (レス) id: 738c9471c2 (このIDを非表示/違反報告)
春日音尾(プロフ) - 枝豆将軍さん、ありがとうございます。至急直させていただきます。ご指摘、ありがとうございました。頑張らせていただきますのでこれからも読んでいただけると嬉しいです。 (2018年11月8日 9時) (レス) id: 9bf1cb7bb4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春日音尾 | 作成日時:2018年11月3日 19時

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