紅い眼の陽炎

８話 人生万事塞爺が虎 ページ10

Aside

少年「良かった…無事で何よりです」


青年１「お前たち何故何処からともなく現れた挙句
川に落ちたんだ。云え」

青年２「まあまあ国木田君、少し落ち着き給えよ。
この子たちも困惑しているし、
茶髪の子なんて怯えてるよ」

青年１「……それもそうか」



恐らく"茶髪の子"とは僕のことだろう。
カノは怯える様子は『欺く』で見せない筈だ。

それよりも、
名も知らない人たちとの会話(コミュニケーション)なんて無謀だ。

此処は"国木田"という人物について知りたい風にさり気なく…。



貴「ぁ、あの…国木田…って…？」

青年２「ああ、この眼鏡掛けてる人のことだよ。

そういや自己紹介してなかったね。

私の名は太宰、太宰治だよ。
よろしくね」

貴「あ、はい、太宰さん。

私は安藤Aといいます。

気軽に名前で呼んでくれて構いません。
どうぞよろしくお願いします」



第一印象は大事…。
ペコリと会釈して少し微笑みを浮かべる。


太宰治か〜…。

人間失格は何回か読んだし、
走れメロスも斜陽も桜桃も読んだ…。


＿＿＿＿って一寸(ちょっと)待って。

太宰治って作家さんだよね。
なんで現代に居るの？

否(いや)まあ、入水とかしてたから河川敷に居るのは
未(ま)だ判るんだけどさ…。



青年１「全く…俺は国木田独歩だ。

不本意だが此奴の所謂(いわゆる)、相棒と云う奴を遣っている。

まぁ、宜しく頼む」

太宰「不本意って………非道(ひど)いなぁ国木田君。

ほら、敦君も名乗りなよ」



国木田独歩…矢張り此方も作家さんの名前だ。

消去法でこの少年が"敦"ということになるが、
この流れだと＿＿＿



敦「は、はい！僕は中島敦と云います。

よ、宜しくお願いします…！」



矢(や)っ張(ぱ)り作家さんの名前。

如何云うことだ？何故作家の皆さんがこんな普通の河川敷に…？

然も中島さんの服はボロボロ…。

更に云えば此処ら一帯は見たことのない風景…。







つまり此処の時代は現代ではない、ということになるのだろうか…？

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