紅い眼の陽炎

３７話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス ページ39

Aside

僕達を残すのが心配なのか、谷崎さんは不安そうに
声をかけてくる。


でもまあ、一応僕、合計２回ﾀﾋんでますし、
ﾀﾋ地をくぐり抜けてきましたから、
これはﾀﾋぬっていう直感が冴えているんですよね。


それに、相手は所詮拳銃。

芥川さんと呼ばれる男の『能力』の威力の高さは
計り知れませんが、一応時間稼ぎ程度は出来るはず。

ﾀﾋぬ迄には至らぬでしょう。



貴「一応私、これでも戦えますし拳銃は銃弾を篭める
時間があります。
そこでさっさと移動して探偵社に向かってください。

芥川と云われる者の破壊力は計り知れませんが
時間稼ぎ程度ならできるはずだと見込んでいます。

私は貴方たちを信じてる。
だから、貴方たちも私を信じてください」


谷崎「……っ！わかった。行こう、ナオミ」

ナオミ「はい、兄様。
Aさん、敦さん、どうかご無事で…！」



最後に振り返ってニコッと笑うナオミさんに笑い返し、
鋼鉄盾の量産をする。

谷崎さんは隠密にピッタリな異能力だったようで、
早速ナオミさんを連れて路地裏を出ていった。


これであとは中島さんを庇いながら防御を続けて
芥川さんとの遭遇に備えられれば…！


不意に、ゴホゴホと咳をする音が聞こえた。


誰か病気を患っているのだろうか…
いや、そんな素振りは誰も見せていない。

真逆と思うが…。


何故か急に鋼鉄盾が総て(すべて)砕かれた。

僕は中島さんと一緒になって横に避ける。


ああ、矢張りか。


目の前に居る樋口さんの後ろには、
黒外套を着た男の人。

写真で見た通りの人物───。



芥川「お初にお目にかかる。
僕(やつがれ)は芥川。

そこな小娘と同じく、卑しきポーマフィアの狗──」


貴「っ、もう来たか…」



目の前でゴホゴホと咳をしながらも
自己紹介をしてくれる真っ黒い彼は、
国木田さんの云っていた危険人物、
芥川龍之介で間違いないだろう。


バッと振り返って自分一人でも充分だとかぬかす
樋口さん。

戦場に於いて、油断は禁物だと教わらなかったのか。


……残念な人。
根はいいのだから、此方側にくればよいものを。


そんな樋口さんの頬をピシッと叩く芥川さん。



芥川「人虎は生け捕りとの命(めい)の筈。
片端から撃ち殺してどうする。

役立たずめ」

樋口「───済みません」

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