32話 ページ34
【真緒視点】
Aと一緒に空港へ向かう途中、ずっと考えてた
本当に離れるっていう実感がなくて
車窓から見える空港を眺めると、Aもああやって出発するのかな、とか
変な事件に巻き込まれるんじゃないかとか…
だけどどこか遠くをみるAを見ると
俺も前を向いて進まなくちゃって思えたんだ
本当は行かないでって言いたい
ずっと俺の側で応援してほしい
俺の知らない世界に行ってほしくない
そんなことばかり過ぎってちゃ出発する時に
何て声をかけたらいいのか分からなくなる
ちゃんと見送れるのだろうか
そしていよいよ出発
俺達は国際線出発口へ入れない
本当は最後まで見送りたいけどな…
もう当分は会えない
このまま黙ってなんかいられない
「A…」
俺が呼ぶとすぐに振り返った
『真緒くん…』
しばらくこの声も聞けないのか
「必ず帰ってこいよ」
Aの両手を掴んで強く言った
『心配してくれてありがとう…大丈夫だよ』
少し涙を溜めて言うAを見てもらい泣きしそうになる
ほら、と言って手作りの俺の人形を抱いて見せる
「そっちもいいけどさ…」
そう言って初めてAを強く抱きしめる
『真緒くん！？』
どっかから「きゃー」なんて聞こえたけど
体を離すとAの顔は真っ赤
「今更だけど、俺気づいたよ」
長い間待たせてしまった
あんずや他のみんなが教えてくれた
これが「好き」っていう気持ちなんだって
「俺、Aのことが好きだよ」
鳴「キャーッ！真緒くんったらあ♡」
あ、そうだ
「渡したいものがあるんだよ」
そう言って小さな封筒を渡す
「向こうに着いたら開封してくれ」
Aの後頭部に手を回し引き寄せる
あ「衣更くん…！？」
鳴「アタシ、もう…ダメ……」
初めてのキスはAの涙の味がした
衣「いってらっしゃい」
そう言って手を離した
頑張れよ、待ってるから
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作者名：愛音 | 作成日時：2018年4月1日 18時
