1 - 3 僕、頑張るから ページ3
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そんな、兄上にとっての光が無くなってしまって、僕は弟としてなんて声を掛けたらいいんだろう。
……わからない。けどこんな悲しい顔した祐兄を黙って見ていられなかった。
「祐兄、僕がいるよ」
「……紅覇?」
手の甲で涙を拭う祐兄に、自分の胸を張ってみせた。
「僕が祐兄の光になる! そうしたら、悲しくなくなるでしょ……?」
僕何かじゃ亡くなった二人の代わりになれないかもしれないけど、頑張るから。精一杯勉強して、強くなれるように剣の鍛練もするから。……だから笑ってよ祐兄。
そんな気持ちを込めて にこっ と笑顔を作った。
驚いたように目を見開く兄上だったけど、僕を引き寄せ「ありがとう」と小さく囁き、強く、強く、抱きしめた。
それから、煌帝国はあっという間に変わっていった。
争い滅びようとしていた天華(極東平原)の民を救う為と三国の統一を果たした、英雄でもある練 白徳様が亡くなり、峻烈さと勇猛さを分けて受け継いだ有望な二人の皇子も亡くなってしまったこの国は、僕と兄上の父親である 練 紅徳が二代目皇帝の座を引き継ぐ事になった。
二人の葬儀も細々ながら無事終える事が出来、迷宮から帰還し悲報を聞かされた炎兄は、真実を受け止められないのか祐兄を見つけると襟を掴み問い詰めてきた。
あの方々がそう簡単に死ぬわけない! なぜお前は平然といられるんだ! と ぐちゃぐちゃ 混ざった感情を兄上にぶつけ、何度も何度も言葉にしてぶつけた。
僕は咄嗟に炎兄を止めようとしたけど、やっぱり子供の自分には非力過ぎて泣いて叫ぶしか出来なかった。
黙って聞いていた祐兄は、襟を掴んでいる手を上から重ね炎兄を宥めさせた。
『俺だって悔しいよ。……でも、自分の気持ちを殺さなければならない。そういう立場に、なったんだよ、炎兄さん』
掴んでいた襟が離される。力なく数歩下がり、炎兄は瞳を揺らしながら顔を俯かせ「解っている……」と呟かれた。
兄上に教えてもらった事だけど、父上が二代目になった事で僕達「紅」は「白」よりも位が上がったんだって。
今まで白徳様の弟の子として日陰で過ごしてきた僕達が、これからは日向に過ごす事なるって言われたけど、今の生活がどう変わるかなんて正直不安だらけで怖かった。
―――選択肢何て、子供の俺達に与えられる事はない。
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初火(プロフ) - ラウさん» ありがとうございます! 次の更新は早めに出来るよう努力します!(。・ω・。)ゞ (2015年7月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ラウ(プロフ) - イラストかわいてです!更新頑張って下さい(*´∀`) (2015年7月20日 23時) (レス) id: 0b7fa14454 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆみさん» ありがとうございます! 実は紅覇君の実の兄という設定はあまり見かけなかったので、だったら自分がなんとかそれを活用し、面白い話を作れたらなと思って書いてました。長文失礼しました! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - 舞舞さん» ありがとうございます! 私の書き方が少しでも参考になれるのなら、嬉しい限りです。 ぜひ舞舞さんが書いている作品を読んでみたいです! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ウルさん» 初めまして! ありがとうございます。時折イラストも載せる予定なので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
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