もう一人の、人斬り。弐。【るろうに剣心】 (ページ16)

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第五話　利用されるということ。漆。ページ16

「弥彦にはわかんないわよ。」
「な！決めつけんのか。」
「嬢ちゃん、そりゃあ言いすぎだぜ。」
薫はなにも言わずに黙っていた。弥彦もなにも言わず。ただ薫が思ったのは、ここには自分の味方はいないのか、と。そして、私の周りにいるのは殆どが男の人、だもの。私の気持ちなんかわかんないだろうから、言ったって無駄よ。それに、恵さんにも知られなくない、し。
「だんまりかよ、女っていう生き物、はよくわかんねえな。」
そう左之助が言ったとき、なぜかわからないが恵さんが薫の近くに来て軽く耳打ちをし、その内容に少し驚く。恵さんに耳打ちされたことは私がさっきまで思っていたことで。当てられた驚いている気持ちと、どうしてわかったのかという疑問点が重なってどうすればいいのかわからなくなったのだ。わずかに、本当に僅かだが目を見開いた薫は、そのまんま左之助に向かって言う。
「私だって、あんたたち男のことなんかわかんないわよ！！」
「な、なんでそんな驚いてんだ、嬢ちゃん。」
左之助は目の前の薫に対し、驚いたように目を見張った。声が少し震えていた、からだ。泣いてん、のか？でも、なんで。と思い、顔を近づける。そうすれば、涙袋に涙を浮かべて、頬は赤くなっている。その瞳と目がかち合う、なんとも言い難い妖艶さを感じ取ってしまう。急に左之助が覗き込んできたことに、薫は驚いて更に泣きたくなってしまった。
「うるさいわよ！！」
そう言って振り向けばこちらにむけて手をヒラヒラと振っているAさんの姿。それをみてから前をむき、さっきの恵さんとの会話を思い出した。
『男っていうのはそんなもんよ。あと少しでAさん戻ってくるわ。』
『なっ、そ、そんなものって……。め、恵さん。』
『だから気にしないほうが得よ。それに私じゃ、対処しきれないから。』
(さっきの、恵さんの一言……。はあ、ほんとに仕方ない、わね。)
薫はその会話を反芻した。まるで面倒だ、というように言っていた。だからそれは逃げたのだろうと推測可能だ。
「え。え、に、」
逃げた！？ひ、卑怯ものお、それにしても、Aさんもまだだし、ってか遅すぎない彼女と恵さん一緒にいたはずじゃあないの！？それに、後ろにいるんだから早く来ればいいのに。と考えを巡らせ、後ろをみれば、さきほどまでいたAさんが、いない(、、、)。
え？は？
「え？A、さん？」
さっきまでここにいたのに、まるでなにもなかったかのように痕跡が消されている。