もう一人の、人斬り。弐。【るろうに剣心】 (ページ14)

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第五話　利用されるということ。弐。ページ14

左之助にしては珍しいと思ったが、それは言わないでおこうと薫は心に秘め、祭りへの道を再び歩き始めた。
「それにしてもどっこにいるんだろなー、剣心のやつ。」
「先に向かっているのかもしれないし、もしかしたらまだ道場にいるのかもしれないわよ、左之助。」
そういうのは恵で。
「とりあえず、行ってみましょ、恵さん。左之助。」
薫の呼び掛けに二人は返事を揃え了承した。祭り囃子の音が聞こえてきた頃、後ろから知っている声が聞こえた。
「薫殿。弥彦、恵殿、左之。すまぬ、遅くなってしまった。」
「おー、よーやく来たのか。遅いぞ。ってお前はいつものままか。」
「忝ないでござるよ。」
「んと、後ろにいるのは、Aか？」
(ほらあ、A呼ばれたわよ～。それにしてもあんたほんとになんでも似合うわね。羨ましいわ、ま、自分の体なんだけどね。)
(み、実花、や、やめて！)
左之助に言われ、Aはえっと、と声をもらしながら、とりあえず髪をさわさわと。なんだか落ち着かない。
(流石、元士族、ね。)
(士族、って……。)
「えっと、着物、ではなく、浴衣、姿……は、誠に慣れないもので、ござる、よ？に、似合ってます？？」
この期待されているであろうキラキラと星のように輝いているそんな雰囲気に、耐えられそうにないからどう言おうか……。目線を泳がせながら、とりあえず、ガツンと衝撃的なことを言ったほうが、場をうまくしのぐことが出きるのかもしれない……と思い、用は試しだ、当たって砕けろの精神で各々の回答を待つ。
そういえば満足そうな声が四人から溢れる。
「嬢ちゃんもAさんも似合ってらあ。」
「ありがとう、左之助。」
「たしか、Aさんは元士族らしいけれど。幼い頃から着物や浴衣を着る機会があったのだから……着なれているわね。」
「あはは。確かに、そうですね。」
かつての優しかった父母とともに行った七五三のことを思い出しながら、そう言った。とても懐かしいような表情は和らかだった。
「A。」
「弥彦？どうしたの？」
「綺麗だ。」
「ありがとう！」
「別にそんな大したことじゃない。」
照れながら言う弥彦に軽く笑みがこぼれた。
「Aさんも、似合っているわよ。まあ、私よりは似合ってないけどね。」
Aは薫ってこんな高飛車だったっけか？と思ったが、そんなことないかと思い直し、「あははっ。なにそれ～。」と言って満面の笑みで笑いかけた。
そうすれば怒っている様に「そんなことないわよ。」と言う。