帝王の天使3 (ページ6)

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104話ページ6

宗「……A？」
そう呼びかけられ、はっと自身の濁流のような思考を一度ストップさせてなんとか表情を通常のものに戻して「どうしたの？」と聞きながら宗の方を向くと、ものすごく怪訝そうな顔をしてそこに立っていた

宗「さっきからどうしたのだね、君らしくない」

A「いや、本当に何もない。後ごめん、先日クラスメイトと約束していたことを思い出したからそっちへ行ってくる。集合時間までにはしっかり戻る。じゃ」
そう手短にやや早口で言い訳のような説明をした後、学生帽を深く被り直して人混みの中へと自身を溶け込ませてその場からは立ち去った
その間に何か声をかけられたようではあったが、俺にはほとんどわからなかった

そうしていつの間にやら隅に移動していたらしい『あの人』の方へと近づくと罠にかかった無知な獣を憫み笑うような微笑を口びるに浮かべてクスクスと静かに笑っていた

その姿に、少し悪寒が走りながらも『いつも通り』に礼をすると

？？「あら、別にいいのに」
と、何が面白いのかまたくすくすと笑われたかと思えば、「こちらにいらっしゃいな」と声をかけながら俺の右腕に巻きつくかのように腕を絡めて目的であろう場所へと連れていかれる

豪奢な着物を上品に着崩し、ワンピースのように少し裾を上げ、細身のブーツのようなものを履いて、頭にはベレー帽を被った、顔立ちの整った女性。

普通の人から見たらきっと驚くほどの美しく洒落た人だと思われるのだろう。実際、近くを歩いている様々な人たちにジロジロとこれでもかと言うほどに見られている。

だが、俺にはずっとこの人のことはどうも『恐ろしい』としか思えなかった。

そうしてしばらく歩き、目的だった校舎裏へと着くと、するしと先ほどまで拘束していた腕を外し、まるで品定めでもするかのように顎を持ち上げられ、じいっと顔を見つめられたかと思うと飽きたのかすぐにその手を外された。

そしてそのまま、ずうっと誰も何も話さぬまま時間が数分過ぎ、これは俺から話を始めろと言うことなのかと悟り、恐る恐る口を開く

A「お久しぶりで、御座います。香織さん……いえ、『母上』」
もう一度礼をしながらそう言えば「ふふふふふ」と、何が面白いのかただただそう笑っていた
かと思えば今度はあちらが口を開く

母「Aちゃん、お久しぶりねえ。大きくなって……会うのは何年ぶりかしら？」
そうくすくすとまた妖しげに笑って、そう問いかけてくるこの人が、俺はどうも得意になれないのだ。