僕の彼女

吾輩は飼い主である ページ20

映画『トラさん』

何だか好評のようで

大ヒット御礼の舞台挨拶も決定したとか





『気にしてるのは、藤ヶ谷だと思います。』





何かのインタビューで、宏光がそう言ったみたいだけど

気にしますよ

大いに気にします

え？ネコ？

いや、そんな事は良いんです

映画見ればわかりますし、宏光のネコ姿が可愛いのは映像で十分伝わりますので





気になってるのは映画の方じゃなくて

宏光の交友関係の方

映画の宣伝であっちこっち飛び回って、番宣もいっぱいして…

その度に





「連絡先、交換した！」

って嬉しそうに言っては

「飲み会誘われた〜♪」

って出掛けて、酔っぱらって帰って来る

気にしない方がおかしいでしょ！





挙句の果てには…





「ぶへっくしょんっ！」





風邪まで貰って来ちゃって…

貰うのは連絡先だけに…いや、それも嫌だけど





「はい、薬飲んで。」

「いや〜。」

「嫌じゃなくて。まだまだ忙しいでしょ？宏光、すぐに熱上がるから。」

「むぅ…飲ませてぇ…」

「はい、口開けて。」

「そうじゃなくてぇ。」

「ん？」

「チューして飲ませてぇ。」

「無理。風邪移りたくない。俺だってレコーディングあるんだよ？」

「……愛してるにゃー…」

「はいはい、俺も愛してるにゃー。」

「…感情こもってない。」

「飲むの？飲まないの？それとも病院行く？」

「…飲むぅ…」





甘えん坊宏光は可愛くて、惚れた弱みかいつも許しちゃうんだけど

俺だってたまには怒ってるってトコ見せなきゃ





「薬飲んだら、ちゃんと寝てね。」

「はぁい…」

「…たぃ、一緒に…」

「寝ません。」

「…」

「おやすみ。」

「……おやすみ、なさい…」





すんっと鼻を鳴らして、鼻まで布団を引き上げると、泣きそうな目で俺を見てる





「…」





負けない

俺は負けないっ！





ドアに手を掛けて、振り返らずにドアを…





「たい…俺もう、太輔の飼い猫だから。」

「へっ？」

「ふらふらって出掛けても、帰る場所は太輔だけだから。」





…ダメだぁ…

俺の決心が…





「ちゃんと風邪治すから…治ったら、一緒に寝て？」

「…」

「ちゅーもしてぇ？」




崩壊…





「もう…完全室内飼いにしたいトコけど…出来ないネコちゃんに虜になったのは俺の方だから…」

「…」

「最後までちゃんと面倒みなきゃね。」





結局…

宏光の隣に潜り込んで、可愛いおでこにちゅーしてる

俺はダメダメな飼い主なのです…



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