私たちは都合がいい２【まふまふ】

55話 ページ8

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…ﾋﾟﾝﾎﾟｰｰﾝ






長く伸びるインターホンの音で目を覚ますと
いつも見る、部屋の天井






セットされていない目覚まし時計は
もうとっくに昼を過ぎていて

日差しがカーテンの隙間から何とか日差しを差そうと光を漏らす







でも私の体は、それを拒むように
布団に張り付いていた








『…っぁ』



正直体を起こすどころか寝返りも辛い

原因不明の筋肉痛が、
体を動かす事すらままならなくしてくる









ﾋﾟﾝﾎﾟｰｰﾝ









そういえばネット通販で
見かけた服を何となく気分でクリックしていたんだと思い出す

たぶんこの音は配達員のものだと思う








鉛のように重い体を何とか起こして
壁にもたれ掛かる






目元が熱い


鏡を見るまでもない、腫れている






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あれから3日が経った



あの日、彼に言われたまま車から飛び出した私は
家に着くまで泣かないと決めていたのに
我慢しきれず駅のホームで号泣してしまった



崩れるように座り込んで
傍から見たら確実に心配される程に







まぁ、終電だったし人はいなかったんだけど









ﾋﾟﾝﾎﾟｰｰﾝ









手元にあるスマホを弄ると
彼とメッセージのやり取りをしていたアプリ




しつこいくらいに目に焼き付けていたチャットは

今はもうどこを探しても見つからない


彼の返す言葉ひとつひとつに一喜一憂していた、
あのメッセージ









私はあの日、彼の連絡先を消した。





ずっと消そう消そうと思っていて、
その度に彼の誘惑に負けて

残り続けていた唯一の連絡手段








私は自分から彼との関係に終止符を打ったんだ



彼が好きで、好きな自分に嘘が付けなくて
心のどこかで期待して我慢していた








『…ぅっ……』


泣き続けたはずなのに涙は一向に枯れずに流れてくる








鳴り続けるインターホンが
どうでもよく感じられるほどに





私の心は空っぽになった
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