私たちは都合がいい２【まふまふ】

68話 ページ21

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「…そこまでしろとは言ってないんだけど」






起き上がって扉の方を見ると、
呆れた表情で私たちを見るそらるさんが


それで一気に現実に引き戻される







何してんだ、私

…ここ事務所なのに






正常になった理性が
まともに頭を動かそうと回り出す








「…あ〜あ。

今いいところだったのに」


「機嫌よくなったからって
していい事じゃないだろ」





小さく舌打ちをする彼とは裏腹に
そらるさんはご立腹の様子

バチバチと火花が散るのが見えた






それを見て申し訳なさが増したので
縮こまっていると

そらるさんは私の方に来て、
少しだけ顔を傾けた







「気持ち、聞けた？」




そう聞くそらるさんを見て、

コクリと頷くと
微笑みながら私の髪を撫でた









「ちょっと、

僕のAですよ？触らないでください」



『…っぇ！？』





吹き抜ける風はもちろん彼のもので、
私をそらるさんから遠ざけるように腰に手を回して後ろに引かれる



いきなり言われた“僕の”発言に
またもや顔の温度が一気に上がった





…どうしよう


幸せすぎて、溶けそう







「あ〜はいはい。

わかったから、まふまふは仕事ね」








『………しごと？』


「…っぁ〜〜そうだった、
まだ残ってたんだった」







そう言いながら彼は大きくため息を吐いて
私の方を向き直る


両手で私の頬を持ち上げるので、
視界いっぱいに彼の顔が映り込んだ








「…待っててくれる？」








…ぇ









.







「…僕が全部片付けるまで

A…待っててくれる？」





今まで見せたことなかったもどかしい表情
そんな不安げな顔も愛しくて仕方ない







そんなの


決まってる






.






『ずっと、待ってる』








何年でも、
何十年でも




それ以外に選択肢なんて、


私には無いんだから







そう言うと、
もう一度蜜がとろけるような笑顔をした彼が薬指を出してきた

私も同じように薬指を差し出す









“約束ね”









子供騙しの小さな口約束に過ぎないかもしれない




でも、絡められた指に

私たちには明日があるんだと
気付かされる









どんな形だっていい、



私たちはもう









“都合いい”関係ではないのだから

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