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67話 ページ20

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彼は手を伸ばして私の涙を拭う


もう一度、触れることの出来た肌が
再び熱く火照り出した






「……たくさん泣かせて、

たくさん嫌な思いさせてごめんね」


『…っ……ううん』






私の大好きな彼の顔が
今、手を伸ばせば触れることの出来る場所にある






「…遠回りばっかりで

やっぱりだめだね、俺」


『……そんなこと、ない』








彼の前に手を出すと
ゆっくり絡められる指先

絡めて、離れて、また絡められる






彼の体温を感じる



彼の温もりを感じている







今ここに、
恋い焦がれた貴方がいる







『…うっ……ヒック…』


「…泣き虫」




『……まふくんだって』







もう一度彼を見上げると
不意に落とされる口付け




懐かしいこの感触


他の誰とも違う、あなただけの唇の温度





頬に添えられる手は熱を帯びて、
艶を含んだ彼の唇が
何度も何度も交わる




ちゅっ、と短めの音が聞こえたと思えば
咄嗟に開けてしまった口の中に
彼の舌が侵入し出す






『……ぁんっ…ぁ…』



「……もっとちょーだい」






漏れる声に構わず
とろける蜜のような甘い表情は
私の頭を溶かしていく


色っぽい声を耳元で囁かれて
過敏になった身体中が大袈裟に反応する







『……っわ!』






グンッと手を引かれ


視界は落ちるように反転したと思えば
その上に彼が覆い被さっていた


光の具合で影になった彼の顔は
心做しか赤くなっているように見えた









『…ま、ふくん、?』





落ちた先は近くにあったソファ


混乱する私を見て、
彼は片手で器用に真っ黒のネクタイを
外して第1ボタンを開けて見せる







.







「……足りない。


…Aが足りない」






ドクン、ドクンと鳴る胸はきっと彼にも聞こえている



彼の逞しい手が私の両腕を固定して
もう逃げられない私にもう一度口付けを落とす


囁かれる声が
脳に響いて、おかしくなりそう






…壊れそうだよ







私が目を瞑るのを確認した彼はゆっくり手を伸ばして、私の服に手をかけた









.









「…ここまでしろとは言ってないんだけど」








その声で、彼の動きはピタリと止まった
.

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設定タグ:まふまふ , luz , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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名無しちゃん(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、ガチ泣きしました、大好きです。これからの新作など応援してます(^^)! (2019年11月11日 4時) (レス) id: f7c3c5ac5b (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず(プロフ) - 密かに新作楽しみにしています (2019年3月9日 12時) (レス) id: 98acc9f874 (このIDを非表示/違反報告)
あーやん - 完結おめでとうございます!!すっごく面白くて一気読みしてしまいました!めっちゃ感動しました...! (2019年2月9日 21時) (レス) id: e016ba62aa (このIDを非表示/違反報告)
Maa(プロフ) - 狐凪さん» ご名答でございます!!私の愛して止まない曲のひとつです。ここまでお付き合い頂きありがとうございました! (2019年2月9日 16時) (レス) id: 5b07d0752a (このIDを非表示/違反報告)
Maa(プロフ) - ティナさん» リクエストありがとうございました!!そう言って頂いて、書いてよかったと心から思います(;;)こちらこそ本当にありがとうございます! (2019年2月9日 16時) (レス) id: 5b07d0752a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Maa | 作成日時:2019年1月11日 20時

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