65話 ページ18
.
カダン!!
咄嗟に立ち上がったので、
机の角に膝を当てて鈍い痛みが走った
けどそんなことなんて、どうでもいい
…まふくん?
そらるさんがゆっくりと
ドアノブにて手をかけて引くと
壁にもたれ掛かるようにして俯く人影があった
全身黒の服に身を包んで
髪も、漆黒の色
髪色が違っていてもすぐに分かる、
私の好きな彼の姿
そらるさんに腕を掴まれた彼は
逃げもせずにすんなりと引かれて
部屋の中に入ってきた
私と目線を合わせようとせずに俯いたまま、
銀色の髪は今では大人しく漆黒の色に染まっている
「……そらるさん、なんで」
「聞いてたならわかるだろ」
「…っ」
困ったように落ちた声のトーンは
弱々しく零れ落ちる
相当驚いていたのか、
言葉が出てこない彼に、そらるさんはパンッと
背中辺りを軽く叩くと
彼は私と目を合わせるように、
少しだけ顔を上げた
「なんで来たの」
『…っ』
「ここは君が来ていい場所じゃない、
帰りなよ」
冷めきった瞳は
突き放すように鋭く、揺れることがない
そう言い残して
部屋を立ち去ろうとする彼に
そらるさんは声を張り上げた
「目の前のことから逃げんな、
まふまふ」
ピタリと止まる彼にそらるさんは言い放つ
ピリリとした空気は
その一言でさらに凍りつく
そしてそらるさんは
私を見た後、
何も言わずに彼を隣をすれ違って部屋から出ていった
.
「…」
『…』
ふたりきりになった部屋は
お互いの呼吸の音すら聞えず、偉く静かになった
一向に話し出す感じがない彼を見て
私も言葉が出てこない
前まではこんなこと無かったのに
私が好きになってしまったばかりに、
こんな事になって
私が都合いい関係に我慢していれば
幸せだったかもしれないのに
こんなに、
身体だけじゃなくて
心まで愛して欲しいなんて
思ってしまっていたなんて
.
「…………さっきは、ごめん」
重たい口を開く彼に耳だけが傾いた
さっきより少し優しめの口調で
話し出す彼にそわそわして落ち着かない胸が
さらに荒く動き出した
「……言い方が悪かったよね」
『…ううん』
変わらず弱々しく話し出す彼は
見たことのない、弱くて儚げな姿
「君に…Aに
ずっと言いたかったことあるんだ。
…話してもいい、かな?」
くぐもる声を漏らさずに聞こうと
立ち竦む彼の方を見た
.
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名無しちゃん(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、ガチ泣きしました、大好きです。これからの新作など応援してます(^^)! (2019年11月11日 4時) (レス) id: f7c3c5ac5b (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず(プロフ) - 密かに新作楽しみにしています (2019年3月9日 12時) (レス) id: 98acc9f874 (このIDを非表示/違反報告)
あーやん - 完結おめでとうございます!!すっごく面白くて一気読みしてしまいました!めっちゃ感動しました...! (2019年2月9日 21時) (レス) id: e016ba62aa (このIDを非表示/違反報告)
Maa(プロフ) - 狐凪さん» ご名答でございます!!私の愛して止まない曲のひとつです。ここまでお付き合い頂きありがとうございました! (2019年2月9日 16時) (レス) id: 5b07d0752a (このIDを非表示/違反報告)
Maa(プロフ) - ティナさん» リクエストありがとうございました!!そう言って頂いて、書いてよかったと心から思います(;;)こちらこそ本当にありがとうございます! (2019年2月9日 16時) (レス) id: 5b07d0752a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Maa | 作成日時:2019年1月11日 20時