私たちは都合がいい２【まふまふ】

48話 ページ1

luz side









「luzさん、大丈夫ですか！？」




後輩の俳優が俺の反応を見て
心配したような顔をしてきた





今、俺がどんな顔しているのか
全くわからない


怒っているのか、泣いているのか

複雑な感情は、表情までも支配してくる








けど

決して、“良い”表情ではないことはわかる




コイツに向ける感情は、
初めて見た時から歪んでいるのだから









「怪我とかしてないですか？」


真っ白の髪を揺らして
俺の肩を覗き込むように顔を傾けて見てきた







いざ本人を目の前にすると、
気持ちがゆらゆらと揺れ始める








「…大丈夫です」


俺がそう言うと
ホッとしたような顔をして、頭を少し下げてから

隣を肩がすれ違うようにしてその場を離れて行く








あまり離れないその身長から

至近距離で顔がはっきりと分かる







君が惚れたオトコ







コツ…コツ…とゆっくりしたリズムで
少しずつ足音が離れていくのが聞こえた







…だめだ


自分にこんなに嫌な感情があるなんて






.




「あの！！！」






俺の叫ぶような声は
人の雑音を掻き分けて響いた



声を聞いた主が
もう一度白い髪を揺らして俺の方を見て視線を合わせる




「なんですか？」






.







言いたいことなんて

たくさんある






聞きたいことなんて

もっともっとある








でも今1番伝えたくて

何より思い続けたことは









.









「Aで遊ぶのやめてもらえません？」







…Aちゃん、

俺は君のことが好き








君がどれだけコイツのことが

好きなのかもよくわかってる






.






…だからコイツから

奪い取りたい





「これ以上Aのこと傷付けるんなら

俺が許さんで」







この時、初めてお互いがお互いのことを認識した







俺はまっすぐアンタのことを見つめると

少し目を見開いてから俯くように黙った


否定はせず、ただ黙っていた







その様子を見て知らばくれるつもりはないんだ
と安心する









「…」



でも黙り込む姿を見て答える気はないように見えた

俺は静かにその場から離れようと体の向きをくるりと変える








.







「…自信ないんですね」




振り返って見ると
顎を突き出すように余裕そうに微笑んでいた


まるで自信に満ち溢れて
奪えるものなら奪ってみろと言わんばかりに




.







「僕に取られるかもしれないのが

そんなに嫌なんだ」

.

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