虎が残した傷痕【文スト】

３２． ページ33

翌日、今日Aは大学の授業があるため、探偵社は休みだ。



Aは基本、大学では特定の友達は作っていない。



今隣にいる子も、この講義の時だけ会う仲なのだ。



「ねえA、ここ教えてくれない」



『そこは〜〜〜〜すればいいんだよ』



「ありがとう！助かるよ！」



『いえいえ』



容姿端麗で頭も良い。おまけに謙虚で決して威張らない彼女に男が黙っているはずもなく、講義が終わった瞬間、Aに話しかけにくる輩が大勢いる。



「ねえ深田さん、この後皆で飲みに行くんだけど一緒にどうかな？」



「深田さんが来ればきっと皆喜ぶと思うんだ！」



『あ、あのすみません。お誘いは嬉しいですが、生憎この後予定があって』



「え！まさか彼氏とか？」



『ち、違いますよ！恋人なんていませんし』



「おいお前等、深田さん困ってるだろ。予定があるなら仕方がないじゃないか」



身長の高い、やや顔が整った男子生徒がフォローに入る。



「仕方ないか。じゃあ深田さん、また今度飲みに行こうな！」



男子生徒の集団は教室から出て行き、Aと先程助けてくれた男性が残る。



『あの、助けてくれてありがとうございました』



一応礼はしておこうと思って頭を軽く下げる。



「そんな、大したことじゃありませんよ。深田さんが困ってるの見たら助けなくちゃって思っただけだし」



『お優しいんですね』



「あ、そういえば深田さん、帰りは徒歩だよね？


途中まで一緒に帰らない？」



『構いませんよ』



教室を出て二人は途中まで一緒に帰る事にした。



その時、Aは少し違和感を感じていた。



その違和感の正体は、わからなかった。

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