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永夢side
昼休み、僕は白河さんに言われた事を思い出していた。
“人は遅かれ早かれいつか死ぬ”
“ドクターという仕事は常に死と隣り合わせだ”
白衣を持つ手に自然と力がこもった。
すると、
「もうドクターなんてやめちまえよ。」
どこからか声が聞こえてきた。
驚いて振り返るとすぐ後ろの柵に男が寄りかかっていた。見覚えのあるその姿に僕は「どこかで・・・?」と声を漏らす。
が、すぐに僕はまたあっと声をあげた。
向こうからAさんが歩いてくるのが見えたからだ。
「Aさん!?」
「ったく、話が済むまで出てくるなって言っただろ。」
側にいた男はどこか不機嫌そうな顔をした。
Aさんは澄まし顔で答える。
「別にいいだろ。ボクだって永夢と話したい。」
僕は久し振りに見るAさんの姿に思わず顔が綻んだ。
どうやら思ったより酷いことはされてないようだ。
「永夢。ひとつ言わせてもらうよ。」
「なんですか?」
急に真剣な顔つきになったAさんに僕の体は思わず強張った。
Aさんは表情を変えないまま一歩一歩僕に近づいてくる。
僕の座っていたベンチのすぐ横で足を止める。
「貴利矢の死、この数日で割りきれた?」
その言葉に僕は思わず視線を落とした。
「いえ、まだ・・・。」
「今日中に割りきる事が出来なかったらもうドクターを止めた方がいい。」
「えっ?」
いきなりの予想外の言葉に落ちていた視線はすぐ上を向いた。
「いや、“ドクターをやめた方がいい”はちょっと違うな。“CRを抜けた方がいい”かな。」
「どういう、意味ですか?」
訳のわからないAさんの言葉に僕は混乱する。Aさんはゆっくりと僕の隣に座った。
「これから先、貴利矢の死以上に過酷な事が君を待ち構えていると思う。人の死だけじゃない。もつと多くの事が永夢にのしかかってくる。貴利矢の死だけでここまでダメージを受けてるんだったらこれから起こることは確実に君には耐えられない。身を引くなら今しかないんだ。」
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チョン・キヌイ - アニョハセヨ!チョン・キヌイイムニダ。チョンロタッテチョンパドモニダ!!!チャンジヌッカマスムクニダ。ハンヨフネ!アンニョン! (2019年5月26日 2時) (レス) id: ce855c598e (このIDを非表示/違反報告)
ゆの。(プロフ) - パラドファンとして、この作品はとても好きになれました!面白いです!更新、頑張ってください。 (2017年6月22日 23時) (レス) id: 5b254ad5b2 (このIDを非表示/違反報告)
彩希 - こんばんわー。初めて見たけど凄く面白いです(笑)パラド好きなので嬉しいです(笑) (2017年5月18日 20時) (レス) id: 0a944ca153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜和月 | 作成日時:2017年4月29日 19時