22話 ページ22
彼は掴みどころのない気を持ちながら、少女に「あの」と声をかけた。
『いいことしたじゃん』
家に帰り、色々なことをAに報告していた。
『ふふ、もうちょっとで人使くんと遊べるのかぁ』
「そうですね」
『結果、気にしてる？』
「まぁ……特にヒーロー科は、もう落ちたも同然なので」
ふと首元を手で触れる。すると耳をくすぐるようなAの含み笑いの声が鼓膜に届く。
「んふふ、大丈夫。何をしてもどこに受かっても、人使くんは素敵な人になれるからさ」
"素敵なヒーロー"と言わないところがAさんらしいな、と思った。
＜2年前、死者を多く出したあの事件の主犯であるヴィランが、本日、タルタロスにて死亡したことが確認されました。警察は本人の個性の影響による──＞
『あぁじゃあ、また結果が分かったら連絡して。すぐ会いに行くから』
上の空で聞いていたニュース番組の音と共に、Aは電話を切り上げた。
(……何か、焦ってた？急にどうしたんだろう)
景気が悪いな、とニュース番組が流れていたテレビの電源を消し、心操は1つ息をついた。
初めてAが男性と話をしているところを見た。それも、かなり歳上に見える男性だった。
それは本当にたまたま彼女を見かけただけだった。駅の広い改札前での出来事だった。
楽しそうだった。
(ネットの、噂)
誰かと付き合っているらしい。
そんな噂を今になって思い出す。
今まで信じていなかった、信じないようにしていたその出来事。絶対にないと確証もないのに信じていた。そうであって欲しいと、心のどこかで望んでいたから。
その男がAの髪に触れた。
心操はただ、自分の意思に従うように体を動かした。
「Aさん」
「ん？あぁ、人使くん」
その呼び掛けに心操は初めて"個性"を使った。
ただの一瞬、ほんの一瞬。本人も気づかないであろう刹那の時間。
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桜芽杏(プロフ) - にょるとさん» 閲覧ありがとうございました！ピアノの曲のようなお話、と言っていただき、私の作品への思いと夢主たちの物語にこもった気持ちが伝わっているのがわかり、とても嬉しいです。こちらこそわざわざコメントまでありがとうございました！ (2021年9月12日 11時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
にょると(プロフ) - 本当に本当に素晴らしいピアノの曲のようなお話でした…！！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2021年9月12日 3時) (レス) id: 4a7d856f5b (このIDを非表示/違反報告)
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