ろ〜く ページ6
顔が近かったからか、彼女が本当に謝っているということがよく伝わった。長い髪が少しホークスにもかかり、甘い砂糖のような匂いがした。
「……俺も悪かった、し、ちょっと……降ろしてくれない……かな」
ホークスは顔を逸らすと、Aは慌てて「す、すみません」と地上へと戻った。
***
(……そーいや、あん時からだったなぁ)
ホークスはふとAと出会った時のことを思い出していた。あの時の自分は酷く惨めだったんだろうなぁ、と今になって思う。
そして同時に、彼女の今までに見た事のない表情を思い出した。おかしな話だが、あの表情が彼女を魅力に感じた全ての元凶だったのかもしれない。
──時間が経つと固くなるわたあめ。
Aのあのピリッとした雰囲気に変わる瞬間は、彼女の個性に由来しているものであろうか。
「ホークス、ぼーっとしていますよ？」
ポンポンと左肩を叩かれて振り返ると、ちょうど左頬にAの人差し指が当たった。クスクスと笑うAに呆れながら「昔のことを思い出してただけだよー」と事務所の椅子に勢いよくもたれかかる。
「高校生の頃ですか？」
「うん、まぁね」
「あの頃は素直でしたね〜、いやはや、ホークスも随分と偉そうになりましたよ」
「実際結構偉いんだよ？俺」
「ホークスは私の啓悟くんでいいのです。みんなに好かれる必要なんてないのです」
その言葉にホークスは硬直する。ゆっくりとAの方へ顔を向けると、なんてことも無い顔をするAが小さく首をかたむけていた。
「どうしました？」
「あっいや、その……」
彼は1度、口を固く閉ざした。
「なんでもないよ。今日はもう帰ろう」
「むーっ、意地悪ですね。帰りは水炊きの鳥屋さんで奢ってもらいますから」
はいはい、と軽く相槌をする。
「どうして両親を憎んでいたのか」なんて、聞けるはずもなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
