さんじゅうはち ページ38
「私ね、昔から両親が厳しくて、井の中の蛙だった」
ネオン街の光が、ぼやっとAの目に映り込む。赤、青、緑、黄。そんな街を、Aは微笑ましそうに眺めていた。
「でも、啓悟くんと出会ってから、私を取り囲んでいた井戸が壊れた。
世界が広がった。何も感じていなかったことに、何かを感じるようになった。
ずっとずっとそばにいて欲しかった。何があっても護りたかった。
君の笑顔が見れるなら、私はなんだって出来た」
ホークスの方へ顔を向けると、小さく笑った。少し目を伏せ、困ったように眉尻を下げて、前髪がふわりも揺れるほどに首をかたむけた。
久しく見ていなかった彼女の顔は、前とは少し変わったような凛々しさを見せていた。
「好きだよ、啓悟くん。この世で誰よりも」
ホークスの手を握り、手の甲へ口付けした。
「ずっと護るよ。命をかけてでも、運命に逆らっても、私は啓悟くんを護る」
ホークスはAを優しく抱きしめた。繊細なものに触れるように、確かめるようにAの肩に手を回した。
自分の顔が酷く赤に染まっているのが分かり、照れ隠しのためでもあった抱擁。
それでももう1つ、確かに抱きしめた理由があった。
「A、もし、君の夢が叶ったら、結婚してくれないかな」
「私の夢が叶ってからでいいの？」
「あぁ。そうしたら君が、全てから解放される気がするから」
「嬉しいなぁ、うん、わかった」
ホークスはポケットから小さな箱を取りだし、抱擁を解くとAの手を取った。
「だから、その日までこれを持ってて欲しい」
Aはホークスに目を合してから、ゆっくりとその小さな箱を開けた。
「……琥珀の、指輪」
「マスターに売ってもらった宝石を、特注で加工してもらったんだ。君に、よく似合うと思って」
「何を売ったの？」
「……秘密にしておくよ」
その箱を閉じると、Aは大事そうに胸に押し当て、ぎゅっと握りしめた。
──いつも優しくて、穏やかで、完璧な君。
でも時々見せる落ち着いて大人びたあの顔こそが、君の本当の感情だってことは、実は昔から知っていた。
それでも君はずっと俺の隣にいてくれた。
笑顔を見せ続けてくれていた。
君が俺から離れそうになる度に、いつも君に依存していたんじゃないかと思っていた。
でももう、そんなことを考えるのはやめにしよう。
これからは、ずっとそばに居てくれる
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桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
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