さんじゅうろく ページ36
紅葉は枯れ果て、細々とした木々が連なる森へと翼を羽ばたかせる。前来た時とは違い、もう日は沈み手がかりとなる明かりも灯っていなかった。
(本当に人がいる気配がない……不気味なところだ)
このままでは帰ることすら危うくなってきた為、1度地上へ降りることにした。
前回はAについて行くだけであの家にたどり着くことが出来たが、今回は1人。
落ち葉を踏み続けてひたすら足を進める。まるで木々が道を作っているかのように、ホークスの目の前には1本の道が常に開いていた。
「……え」
さっきまでひとつの明かりもなかった森に、なんの前触れもなく家が現れる。それはホークスの探していた家であった。
こういう時は何か演出の1つや2つでもあるものでは無いのか、と思いながらもホークスは足を早めた。
「いらっしゃい」
凛として、それでいて透明なマスターの声が聞こえる。前来た時と品ぞろえはガラリと変わっており、駄菓子を中心とした昔ながらのお菓子。そしてコマやけん玉など、一昔前のおもちゃが置かれてある。
「Aのことについて聞きに来た」
「知っているわ」
マスターは紙に文字を綴り続けている。ホークスには理解できない言語だった。
「でも、教えに貰いに来たんじゃない」
「知っている。だからここへの道を作ってあげたの」
あくまでもAのことはホークス自身が知ることであり、他人に全てを教えてもらうべきではない。
それを承知の上、ホークスは真剣な目でマスターを見た。彼女は文字を綴り続けている。
「俺はAを、あるべきAを殺していないか」
「……イエスかノーかで言うと、ノーね」
万年筆が紙を擦る音が止まることは無い。
「貴方は出会った時から気づいていたはずよ。彼女が普通でないことも、あるべき姿をしていないのも。
そして、貴方が彼女を想う理由を」
「あぁ気づいてるさ。でもそれだけじゃダメだって分かった」
ホークスは静かに、怒りの感情を抑えるように声を震わせた。それは紛れもない自分自身の手網を引くように。
「俺は、Aを幸せにしてあげたい。
繊細で、脆くて、いつ消えてしまうかも分からない彼女のことを。
俺は、ずっと昔からAがそばにいて欲しかった。
心の底から笑っていて欲しかったんだ」
「なら伝えなさい」
大きな音を鳴らして万年筆を置き、まるで怒鳴るようにマスターは声を張った。
「絶対に後悔しないように、彼女を救うために、貴方の言葉で伝えなさい。
そして、受け入れて」
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桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
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