【あんスタ】男だけど何か？(４)

天下分け目*１ ページ40

Ra*bitsの皆と別れてから数分後のこと。

ステージの準備も終わり、あとは合図を待つだけになった。もうそろそろだと思うと、今更ながらに緊張と不安が押し寄せる。

満員御礼の客席では、今か今かとアイドルの登場を待ちわびて胸を躍らせているのが見える。しかし、その感情を向けられているのは俺じゃない。

fineやTricksterといった、決勝戦を争うアイドルに向けてだ。

余興があるといのはサプライズらしく、お客さんどころか夢ノ咲学院のアイドルたちも知っている人はごく一部だと思う。

ごくり。喉を鳴らして唾液を飲み込み、汗ばんだ額を手の甲で拭う。と、その瞬間＿＿……


「皆さん、只今よりサプライズパフォーマンスを行います。決勝戦を行う前の、ほんのひと時の癒しの時間をご堪能ください！」


＿＿……アナウンスと共に、講堂内を照らしていた照明が落ち、辺りが薄暗くなった。ついにきた、合図だ。

客席のどよめきが聞こえる。予想のつかない自体に、困惑と期待が混じった声は、どんどん大きさを増すばかりだ。まあそりゃそうか。何せサプライズだし。

ライブなどで、歌手やアイドルがよく耳に装着しているイヤホンマイクを口元に持ってくる。こんなの付けるのは初めてで、蓮巳先輩にやってもらったのは申し訳なかったな。

そのときのことを思い出して、笑いを零す。

＿＿今更もう後には引けない。大丈夫だ、俺には応援してくれる先輩や同級生がいるんだから。

自分を鼓舞するように拳を強く握りしめ、これが終わったらおじいちゃんこと零先輩にお菓子を強請ろうと誓い、俺は大きくステージ上へと足を踏み出した。

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