連行*３ ページ5
「──よし、できた」
俺の人差し指に絆創膏を貼った先輩は満足そうに笑った。
きっといいパパさんになりますよ。救急箱を手に戻ってきて「痛くないか？」とか「ちょっと染みるぞ」と慣れた手つきで治療してくれるんだもん。今だっていつの間にか持ってきていた箒と箕で、落ちた欠片を捨ててるし。
どこまでイケメンムーブかませば気が済むのか、と見ていれば、視線に気づいた先輩がこちらに歩み寄ってきた。
「それにしても、思いのほか傷が浅くて安心したよ」
「こう見えて丈夫なんでね！それに、きっと飛び散った破片で切っちゃっただけだと思うんで！」
得意げに笑ってみせると、先輩はバツが悪そうに顔を顰めた。
「俺が言うのもなんだけど、もっと怒ってもいいんだぞ？不注意とはいえ、嫁入り前の体に傷、を……？」
そこまで言ってピタリと動きを止めた先輩は、口をぽかんと開けながら俺の顔を凝視してきた。
なに、なに。なんなの。
口に指を突っ込みたいと悪戯心が疼いたが、初対面にそれはないなと思い直すと、先輩が八ッと我に返って顔を引き攣らせて言った。
「……おまえ、ホントに新入生だよな？」
まさか夢ノ咲に相応しくない、とでも言いたいのか。失礼な、俺だってあと数センチ身長が高ければ！
「……アイドル科とその他の学科は、別校舎になってるんだけど」
そのこと知ってた？
さっきまでの穏やかなオーラで、けれど強めた語気で訊ねられ、思わず「え」と声が出た。
異様な緊張感のなか詰め寄られて、気分は事情聴取を受ける被告人だ。
「し、知りませんでした……」
けどそれがなんだって言うんだ、とドギマギして入れば。先輩は何か悟ったみたいに「やっぱり」と呟く。
「こっちはアイドル科の校舎で……あっほら、丁度あっちに見えるのが他学科の校舎。で、ここまで説明すればわかると思うんだけど…」
今の一連の流れで何を理解しろと？尋問したいならカツ丼出してからにしてほしい！カツ丼！
先輩が指さした窓からは、もう一つの校舎の他に舗装されたグラウンドが見える。それを眺めつつ、足りない脳みそで考えてみるが、やはり何の話か見当もつかない。
日本の察してもらおう精神、すっげぇ不便。
よく言うじゃん、空気読めって。誰だ最初に言い出した奴。あんた空気に文字が書かれているとでもお思いで？
何処ぞの誰某にイラッとして眉間に皺が寄る。困ったもんだ、なんて思っていたら。
「そんな顔すんなって。わかれば大丈夫だから」
何を勘違いしたのか、人好きの良い笑顔で手招きされた。
「ほら行くぞ」
「取り調べ室に？」
「なんでだよ。あっちの校舎に決まってるだろ」
……は？
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苺バニラ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！そう言って頂けると、嬉しい限りです！更新が遅めになっていて申し訳ない気持ちで一杯ですが、これからも頑張ります！ (2019年8月20日 14時) (
レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りな - 凄く良かったです!!面白かったです!!更新無理をせず頑張ってください！応援します!! (2019年8月20日 10時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - りさこさん» ありがとうございます(*´ω｀*)とっても嬉しいですし、励みになりました！りさこさんは優しい方ですね！今後も頑張ります!! (2019年7月29日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りさこ(プロフ) - 更新お疲れ様です！とにかく最高でした！！これからも応援してます！！ (2019年7月29日 0時) (レス) id: c7281289de (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 夜桜ナイフさん» ありがとうございます！時間が空き次第でよければ、拝見させてもらいますね！ (2019年7月14日 16時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
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