【あんスタ】男だけど何か？

ファッションショー*３ ページ27

「──あの、もういいですかね？これで五着目ですよ？」

「もう少し待ってくれるかい？」

「はぁ……」

かれこれ30分くらいは経っている。その間、俺は人形さながらに色々な服に着替えさせられていた。斎宮先輩は「この組み合わせが……」とか「この色味は……」とか独り言を呟きながら真剣に悩んでいる。

あぁ、お腹すいたなぁ……。夜ご飯どうしよ。豚肉があったからトンカツでも作るか。あ、でもキャベツないかも。

現実逃避として冷蔵庫の中身を思い出していく。正直、早く終わって欲しい。

「──よし、これでいい」

「ようやくですか。で、次はどんな衣装を？」

「それは見てのお楽しみだ」

斎宮先輩が綺麗な笑みを浮かべる。へいへい、と俺は流れ作業のように試着室へと入った。もう何も言うまい。

一着、二着……と回を追うごとに、ゴテゴテの装飾品がついた服に順応できるようになった。もう着るのは慣れたもんだ。無心で手早くジャケットを羽織り、最後にネクタイを結んで──はい、完成。

「着れましたよー」

シャッとカーテンを開ける。斎先輩と影片先輩がこちらを見た。その瞬間、斎宮先輩の瞳が爛々と輝く。

「──ットレビアン！！」

「うおっ！？」

「まさに神が作り給うた奇跡っ……！」

なんか、すごい褒められてる？

「これが世に知られず朽ちていくのは勿体ない！A、僕のマリオネットになりたまえ！世界中が君を賞賛し、崇め、尊ぶんだ……！」

それにしても話が飛躍している気が。このままじゃ本気で舞台に引っ張りあげられかねない。それどころか、今後も着せ替え人形にされること間違いなし！

(影片先輩、助けてください！)

「……！」

視線で訴える。すると先輩は察してくれたようで、こくりと頷いた。

「お師さん、少し落ち着きぃ」

「なんだね影片、邪魔をしないでくれ」

「まあまあ。そないいっぺんに言うても困らせてまうよ」

影片先輩はにこやかに笑う。た、助かった！このひとは常識人で本当に良かった！

「いきなりそんな話されても、ついていけんと思うんよ」

「そうそう。先輩の言う通りで──」

「そういうのは、一つずつ説明せな」

「あんたも敵か！！」

きょとんと首を傾げた後、ふわりと頬を弛める影片先輩。

「その衣装、何度見ても可愛らしいわぁ♪」

「衣装が可愛くても、俺が着てるんじゃ台無しな気が……」

「そんなことあらへんよ。まさか鏡見とらんの？」

思わず目を逸らす。

早く終わりたい一心でさっさと着替えて出てきたから、自分がどんな姿をしているのかなんて確認しなかったのだ。

「ほんなら見とき。似合うとるから」

後押しされ、渋々鏡の前に立った。

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