【あんスタ】男だけど何か？

連行*1 ページ3

大股で自分のクラスへ向かう道中、頭の中は先程のことで埋め尽くされていた。


淡い桜の花びらをバックに、武者震いからか、はたまた緊張からか。震える拳を握りしめて、顔を真っ赤にしながら愛を伝えてくる姿。

きっとここがドラマの世界なら、love so sweetが流れてた。が、しかし。ひとつだけ問題がある。


「なっんで『男×男』なんだよ！！」


発酵したお姉様方が御用達の展開じゃねぇかチクショウ！！


この世に生を受けてはや15年。

ひっじょーに遺憾だけれど、男に告白されたのは何もこれが初めてではなかった。つまるところ、この程度のトラブルは痛くも痒くもないのだ。……嘘ごめんなさい、ちょびっと痛いです。心が。

……まあ、それは今置いといて。


この俺、城崎Aの不幸エピソードは山ほどある。

街を歩けばおっさんから痴漢され、学校では「私の彼氏返せ！」と身に覚えのない理由で校舎裏に呼び出され──挙句の果てにストーカー被害！！

お陰様で『特技はスタンガンの武装』っつう物騒なステータスに。これアイドルとして大丈夫？取材で「○○(※会社名)のスタンガン最高っすよ！ビビビッと電気をよく通します！！」とか言っていいの？


生まれてから、っつうか自我を持ち始めてからずっとこれなもんだから、不本意だが慣れてしまっている自分もいる。けれどやはり気分の良いものではない。ハッキリ言って嫌気が差していた。

そんなとき、受験期真っ只中の俺は気づいてしまった。


『男子校なら女だって勘違いされないんじゃないか？─By中学の俺─』


というわけで、俺は男子校のパンフレットを漁りに漁りまくり。目に止まったのがこの私立夢ノ咲学院。

そこでまたまた気がつく。


『アイドルになれば全世界に俺が男だと発信できる……ハッ、俺って天才！？─By中学の天才な俺─』


ほぼノリと勢いでアイドル科に進学を決め、ご覧の通り結果は合格。その日の夕飯は赤飯だった。

やっと世間に男として認知してもらえる。パパラッチに『人気アイドル城崎A、女子アナと密会か？！』なんて書かれたりすんのかな。いやー、まいっちゃうよな！うんうん！

………と、思っていたのに。



「何が悲しくて男から告白されにゃならんのだ！」


入学早々間違われるだなんて、それこそ何かの間違いだろ！そうであってくれ頼むから！


なんて考えながら歩いていると、やっと長い廊下に面した階段を見つけた。

周りに人がいないのを確認してから一段飛ばしで駆け上がり、ちょうど踊り場に差し掛かったそのとき。上から声が降って来た。


「っ、危ない！」


その瞬間、頭上めがけて何かが落下してくる気配を感じた。

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